ドイツのメルケル首相が訪問先の小学校にて、ユーロは弱すぎると発言をしました。
これを受けて、ユーロは対ドルに対して急騰をしました。何度も言いますが、ユーロが高くなるとドルは安くなるのが当然ですから、円も高くなります。
円安を論調としながらユーロも高いとアホなアナリストは間違いだらけのことを言うな、と言ってやりたいと思います。私からすれば、こういうことを言っている奴は素人以下、という感想になります。
発言の背景
ドイツは言わずと知れた、輸出大国であり、自国通貨安が自国の発展をもたらすので、本音ではユーロが安くなってほしい、というと思うのが普通です。記事の中では「ドイツはユーロ安の恩恵を受けている」とも言っているのですからこの発言が明らかに矛盾しているということになります。
ドイツが抱えている問題というのは、やはり「ドイツ銀行」のギリシャ向け債権の処理になりますが、この債券は当然、ユーロ建てになります。つまり、ユーロが安ければ安いほど、その債券の含み損は大きくなり、高くなれば、高いほどその含み損は減少するということはおわかりになると思います。
そして発言の中ではフランス大統領選挙にも、言及しており、その当選者に驚きを隠していない、とこも発言しています。先ず、人間は、直近の出来事に対して思考というものは偏る傾向があり、この発言は、政党に属さないフランス大統領がなぜ、問題なのか、を考えなければいけないということです。
これは、アメリカ大統領も同じことであって、現職のアメリカ大統領も民主党と共和党を行ったり来たりしていたのは周知の事実で、実質、無所属と考えてもいいということになります。
そして、今後の日程を考えた場合、週末はサミットになるわけで、そのサミットで環境も自由貿易も全く発展がない議論になることは容易に想像ができることになります。全会一致で決定するのはテロとの戦いになると思いますが、これはリスクに対しての対策で、経済の対策ではありません。
つまり、全世界で合意していることは自由貿易であってその合意形成が得られないということになれば、それは輸出大国であるドイツの損になるという思惑がメルケルさんの頭の中にあると考えられます。
ドイツの立場
ドイツはギリシャ向け債権がユーロ高によって、含み損が解消をし、そして、自由貿易で大きな利益を担ったのですから、当面はユーロ高でいい、という解釈でいいと思います。
つまり、かなり貿易で儲けたので、当面は不良債権処理に今後は行く、という声明ととらえればいいと思います。不良債権の問題は、また機会があればお話をしますが、この問題も複雑怪奇だと思います。
そして、貿易の面に置いては、まず、サミットでの合意形成を阻む、トランプさんの不満というのはドルが高すぎる、ということにあります。
実際、ユーロの今年度の基準値というのは0.84であり、現実の相場に対して、33パーセント高になりましたが、以前は1-5パーセント程度しか高くないような状態ではトランプさんが貿易面において不利になりますので、文句を言うほかありません。
日本や中国などは常に40-50パーセント、ドルに対して安いのですから、この状況では、アメリカに対しては日本や中国よりはドイツのほうが要望を通しやすい、ということが言えると思います。
フランスは無所属大統領ですので、何を言い出すかわからない、という側面もあり、またフランスもドイツの主要貿易相手ですので、何の文句を言ってくるかわからないという立場が冒頭の発言につながったのだと思います。
つまり、ドイツの立場は、今は貿易で儲かり過ぎているので、少し、アメリカやフランスに譲歩しましょう、というのが基本的な立場になると思います。
ユーロは高いのか?
ユーロ楽観主義に対しては、個人的にはあほらしく感じています。なぜなら、やはり、2009年に起こった南欧債務危機の影響で、各国とも債務残高が全く解消をしておらず、この処理には相当な時間がかかります。
日本のバブル崩壊でも、銀行が公的資金を返済したのはついこの2-3年のことであり、1992年にバブルが崩壊してから、何年の歳月がかかったのか、と思います。
つまり、当面、「ECB」は利上げなどできるすべはなく、若干、ユーロ経済はよくなったものの、儲かったお金は全て借金の返済に充てなくてはならず、日本の失われた20年のような状況が続くことが予想されます。景気がよくなっても、金利を上げられないということです。
つまり低成長時代入りをしたのです。そこで中長期的にユーロ高と騒ぐ連中が、なんでそんなことで騒ぐのだろうと思います。
ドル高について
2013年に「FRB」が「QE」の拡大停止をしたことによって、それまでのドル安が大幅に修正され、ドルが異常に高くなったのです。「リーマンショック」が2007年になり6年間、ドル安が続き、その間、日本やユーロはドル安を容認した経緯があります。
そして2013年から2017年まではその反動でドルの大幅高になったのです。つまり現状のドルはまだまだ、高すぎる水準にあり、そこで円安と叫ぶ方は時代を読む力がないと言えると思います。
つまり、トランプさんは4年間のドル高に我慢ならない、と言っている訳で、それを軟化させるためには、メルケルさんのようにドル安を容認させようとしているのです。
つまり、国際協調の中で、アメリカがこれ以上苦しむようなことは、もうやめようと言い始めたメルケルさんの意見がこれから社会の主流になってくると思います。それでも、あなた、円安を信じますか?
(この記事を書いた人:角野 實)