FX取引をしていると、相場の急変に見舞われることがあります。短期間での値動きが大きくなると、大きな利益を上げやすい一方で、巨額の損失を被るリスクも高まります。
場合によっては資産額がマイナスになりかねない損失を被る可能性もあります。こうした巨額損失によって投資家の資産がすべてなくならずに済むよう、FX会社は投資家の損失が一定値を超えるとロスカットを行います。これが「強制ロスカット」です。
ロスカットが発生する局面
では、どのような局面でロスカットが発生するのかを見てみましょう。
まずは、予想と全く方向性の異なる統計指標が発表された場合です。統計指標の発表前には、市場の予測を平均したコンセンサスの値が示されています。
このコンセンサスをもとに、相場は実際の指標発表前から動き始めます。そのため、発表された指標がコンセンサスと大きくかい離していれば、相場の動きがさらに加速したり、急に逆行を始めたりすることがあります。こうした局面では相場の動きが大きくなりがちです。
激しい動きについていけず、取引を見送るトレーダーが増えると、投機的な動きも活発になります。また、テロが発生した場合にも為替レートが急変することがあります。
テロの発生を予測できるのはテロリストだけです。FXトレーダーは政情不安をある程度予測できたとしても、テロの発生タイミングを正確に予測することは不可能です。
したがって、テロ発生時にはリスク回避で低リスクとされる円などの通貨が急騰することがあります。
こうした相場の急変が起これば、高いレバレッジをかけているトレーダーを中心に、証拠金が不足します。トレーダーの資産を最低限守るために、FX会社はロスカットを行うことになります。
ロスカットのスピードが大切
ロスカットはむやみに行うと、損失が膨らんでしまいます。実際、短期的に相場を大きく変動させ、多くのトレーダーをロスカットの被害に遭わせる「ロスカット狩り」という動きがみられることもあります。
ロスカット狩りの被害に遭えば、中長期での為替変動の予測が当たっていても、強制的に損失が確定してしまうのです。
いっぽう、テロや大災害など、発生する頻度が少ない出来事をきっかけに相場が急変するケースでは、ロスカットが役立ちます。どんなトレーダーであっても、365日24時間常に相場に張り付いているわけにはいきません。
ところが、相場の急変は、トレーダーが眠っている間など、スピーディーに取引できないタイミングで起こる可能性もあります。そんな時でもロスカットがあれば、資産を全額失わずに済む事があります。
いっぽう、相場の急変があまりにハイスピードであれば、FX会社によるロスカットが追いつかないことがあります。
ロスカットの遅れによって、資産額がマイナスになるなどの致命的な損失を被ることも否定できません。ロスカットはあくまでも一種の保険であり、保険が常に資産を守ってくれるとは限らない点を意識しておきましょう。
ロスカットが間に合わない局面例
ここでは、相場急変のスピードが速く、ロスカットが間に合わないトレーダーが多く発生する局面の具体例を見てみましょう。
レバレッジ20倍で取引をしていた場合を考えます。このとき、1ドル=100円だった相場が、急に1ドル=97円になりました。3%の変動ですが、レバレッジ20倍なので、損失は60%となります。
ところが、ロスカットになるトレーダーが多かったのでロスカットが遅れ、1ドル=95円になってしまいました。こうなると、レバレッジ考慮後の損失は100%、つまり投資額をすべて失うことになります。
レバレッジをかけているだけあって、いざロスカットが遅れると一気に資金を失ってしまうのです。
「リーマンショック」やギリシャ危機などのイベントが起こった際には、ロスカットに遭うトレーダーが実際に多く発生しました。
FX会社選びの際はロスカットスピードをチェック
ロスカットは遅れると損失が拡大し、場合によっては借金を背負うことにもなりかねません。
ロスカットスピードはFX会社によって差があります。FX会社を選ぶ際には、ロスカットスピードについても確認しておきましょう。