ドル円相場と円ドル相場には似て非なるものです。単に1ドル当たりと1円当たりの通貨の価値の違いではないか、と思う方も多いと思いますが、全然違います。
今回はその点を詳細に解説していまいりましょう。
全く違う意味
ドル円相場は、「1ドル当たり○円のレートになるという意味」 一方、円ドル相場は「1円当たり○ドルになるという意味」になります。
これを計算式で表記をすると、ドルGDP総額÷円GDP総額=日米間の経済格差/円GDP総額÷ドルGDP総額=日米間の経済格差/円となります。
この答えの部分、出る解の通貨が違うことが問題点なのです。
円とドルで表記されるということは全然違うのです。すなわち、円ドル相場で計算する場合はドル建ての計算をして、ドル円の場合は円建ての計算をします。
たとえばアベノミクスの場合
「アベノミクス」を実行した場合のドル円相場は、「全部円建て」で計算をします。
通貨供給量が日本銀行の異次元緩和、通称、「黒田バズーカ」で増えるわけですから、円は需給の関係で安くなって当然のことになります。
しかもドル、アメリカのGDP総額が円建てによって計算をされるのですから、円安効果でドル建ての額面よりもアメリカGDP総額は増えます。
日本も「金融緩和」を行って景気がよくなる期待があるのでGDP総額は増えますが、日本とアメリカの経済格差が2.8倍くらいありますので、数字の大きいドル建てアメリカGDPを円建てに換算した場合、もともと数字が大きいのですからより一層、円建てアメリカGDPは増えるので大幅に円安が進むのは当然です。
一方で、円ドル相場はドル建てでの計算になりますので、円のGDP総額は逆に円安になっているので、ドル建ての日本GDP総額は減ります。
またアメリカのGDP総額はアメリカが成長も減速もしないことを前提とした場合は円高になりますよね。
東日本震災直後の場合
東日本震災直後は原発事故と首都圏直下型地震でしたので、円高になったのが未だに理解できない人が多いと思います。
ドル円の場合は、円のGDP総額が地震によって減るのですから、分子である日本が減少して当然になります。ドルGDPは変わらないと想定した場合、みなさんが想定するように日本の経済の先行きが暗いのですから円安になって当然のことになります。
しかし、円ドル相場は円が分母になってドル建てですから分母が減った場合は円高になりますよね。
上記の例を考えていくと
上記の例、典型的な円高相場と円安相場と例にとったわけです。どちらも相反する結果が出たのですが、不思議なことと思われる方も多いと思います。
ただ、世界の通貨レート標準は通常はユーロドル相場のようにドルが分子に来るレート表記になりますから、クロス円のように、円が分子に来るケースは圧倒的少数になるのです。
つまり、ドル円相場などは、世界標準からみると異質なケースになるのです。ドル円相場が難しいと個人的には感じますが、ニュースの材料、それが日本サイドの政策によるのか、それとも海外の投資家がどう判断するかによって円高、円安のトレンドは変わるということになります。
たとえば、「アベノミクス」のように日本の政策によって、しかも通貨需給まで加味した場合は円安に行ったのですが、地震や日本経済が低成長である場合、GDP総額は世界のそれと比較して小さくなるのですから円高に行って当たり前なのです。
日本がマイナス成長や低成長の場合は、日本の価値を世界で均衡させるために為替相場は物価が下がって価格調整をするのと一緒で円高になるのです。
では現在の状況
日本は緩和を実施しているのにも関わらず、低成長なのですから通貨の需給効果は完全に今は剥落しているのです。
つまり需給はすべてのものに優先する経済原理を無視して今の為替レートは円高に進んでいるのと一緒のことです。となると、日本の郵貯マネー、年金マネー対、外国人投資家の勝負はどうなるのか、といえば、どちらの理屈に分があるのかは考えなくてもわかるでしょう。
また、これが通貨の需給がクローズアップされた時には円安に行く可能性もあるのです。
ですから私は、今年の年末から年初にかけてまた円安に行く可能性はあるということを言っているのです。今の状況は一方的に円高にいくと盲信するのも危険な状態にあります。
マスコミの9割が円高にいくと言い始める頃合いがそろそろ訪れるでしょう。その辺が境目になると経験上思います。