今回の熊本地震で被災された方々に深くお見舞いを申し上げるとともに、犠牲になられた方々に深い哀悼を申し上げます。また一日も早い復興を心よりお見舞い申し上げます。
今回の地震というのは、個人的には想定の範囲内のことだと思いますが、その後のマーケットの反応は予想外のものと個人的には考えています。
補正予算に関しては想定内だが、日本銀行の追加緩和はあるのか?
これだけの災害になりますので政府の補正予算の発動に関しては誰もが認める政策になると思います。これによって危機に瀕する日本の財政がどうなってもやはり困っている方々に救済の手を差し伸べるのは当たり前の話だと思います。
確かにあれだけの災害になるのですから、心情的には追加の量的緩和には賛成をしましが現実面はそんなもの本当にできるのか、できてもマイナス緩和の拡大くらいのもの、という認識が私の認識です。
今回の中国を筆頭とする新興国の経済減速の元凶は日本
実は、今回の中国を筆頭とする東アジア各国の経済の減速の元凶は日本の「アベノミクス」というのが現在の世界の見方になると思います。
過去を思い起こせば、「東南アジア通貨危機」の元凶というのも日本になります。日本が榊原財務長官とアメリカのサマーズ長官で日米でのドル防衛のための通貨介入、その後のアメリカの利上げによって新興国から資本が引き揚げ、その元凶の原因となったことは皆さんにも説明したとおりです。
今回、新たに説明をしようとするのは、その円安政策によって東南アジア各国の日本からの借金の金額総額が膨らんだことが東南アジア各国の借金返済を滞らせた原因でもあります。
日本の借金は「円借款」というくらいですから円建てで行われ、ドル建てでは行われていません。
つまり東南アジア各国が日本から円借款したものは日本円で返済しなければならず、円建ての借金が円安になることによって円の借金総額が膨らんだことも東南アジア通貨危機の要因の一つになります。
今回は「アベノミクス」によって日本は通貨安政策を取り、その円借款の金額の返済は円建てで行われることには変わりがありません。
つまり、東アジア各国の経済が成長していたときにはその返済には問題はなかったのですが、今回の場合は中国が経済失速したことによって、それに頼る東アジア各国も失速してしまったのが年初からのマーケットの原因です。
直接的な原因は当然、アメリカの利上げが原因になりますが、この新興国の問題は去年の夏から続く問題になります。
日本政府は「東南アジア通貨危機」の反省からチェンマイ協定を東アジア各国と結び、その政府が資金的な困難になった場合はアジア開発銀行を通じて援助するという協定を「アベノミクス」がスタートしてからその協定の強化に奔走しましたが、それでも追い付かないというのが2月までの状態でした。
そこで、2月末で「上海合意」によってドルを安く誘導することによってその結果の円高なのです。
熊本地震を境に国際情勢が変わるか、否か?
つまり、現在の状態というのは、世界は新興国の苦境を世界的に助けようというのが上海合意の本当の意味になります。熊本地震までの間、日本政府は郵貯、年金マネーを使って必至に日本株式市場や為替市場を自分たちの思惑通りに動かそうとして「介入」をしました。
結果として、地震直後にアメリカの財務長官、通称「通貨マフィアの総帥」が日本を非難したのです。
地震直後にアメリカ財務長官に非難が集中していましたが、約束を反故にしたのは日本政府でアメリカの財務長官は国際合意を守れと言ったのにすぎないのです。
そのタイムラグと相まってその発言に非難が集中したのです。ですから悪いのは日本なのに、お門違いの非難などしても国際社会から無視されて当たり前です。
現状としては日本を助けるのと、中国を筆頭とした新興国を助けるのが世界の選択肢になりますが、基本、日本が国際合意を無視して「介入」を行い、それを達成したのですから心情的には新興国を助ける方向に向かうと思います。
つまり、今、熊本地震直後ですから、想定外のことが起こったので「日本銀行」は当然、追加の「量的緩和」を検討すると思いますが、国際社会からこれ以上、爪はじきにされないように「マイナス金利」の拡大ということで押さえるのではないかと考えています。
補正予算もぐずりながらも決定したのも「マイナス金利」によって国家財政が一息計算できるとの思惑も働いていると思います。
(この記事を書いた人:角野 實)