投資の世界において、非常に危険なものとして語られる手法に「ナンピン」があります。ナンピンとは何か、なぜ危ないと言われるのか。
そもそも、本当に危ないのか。今回はナンピンについて掘り下げてみます。
ナンピンとは
ナンピンとは、損失が出ている場面でさらに同じ方向のポジションを取り、平均を損益分岐点に近づける行為を指します。
具体例を出しましょう。例えば、ドル円が120円のとき買いポジションを10万通貨分取ったとしましょう。しかし、ドル円はその後下落し、118円になりました。
ここでまた、ドル円の買いポジションを10万通貨分取ります。すると、ドル円買いポジションを119円で20万通貨持っているのと同じ状態ができます。これがナンピンです。
プロですら当てるのが難しいのが相場の世界
さて、保有ポジションの損益分岐点が下がり、一見すると良い手法に見えるナンピンですが、なぜそれほどまでに危険と言われるのでしょうか。
それは、「相場の方向感が間違っていた時に大変なことになる」からです。2015年も年末にさしかかり、マネーメディアではアナリストによる株価、為替の予測が載る時期になってきました。2015年はここから変動する可能性が大いにありますから、2014年のドル円予測を振り返ってみましょう。
実は2014年は多くの金融機関、アナリストがドル円の高値目安を1ドル110円程度の予想していたのです。結果は御存知の通り、10月に行われた日銀の追加金融緩和により、年末に1ドル121円を付けるほどの円安となりました。
無謀な買い増しで損失が膨らむリスクも
話を戻しましょう。何が言いたいのかというと、我々の何十倍もマーケットをよく見ている人たちですら予測するのが難しいのが相場なのです。
素人とまでは言いませんが、金融の世界で働いたことのない我々であればなおさらでしょう。ナンピンによって損益分岐点が近づくとは言え、さらに逆行した場合のリスクは高まってしまいます。
先程の例で言えば、ここからさらにドル円が下がり117円になった場合、40万円の損失になります。
もし118円の時点で素直に損切りしていれば、20万円の損失で済みます。ナンピンはそれだけのリスクを抱えているのです。
効果的、慎重に運用すればかえってリスク軽減にも
さて、ここまでナンピンの危険性をさんざん訴えてきましたが、私はナンピン否定派ではありません。
むしろ、効果的に使うことはかえってリスクを軽減することにつながると考えています。ここでまた、先ほどの例を引っ張ってきます。
先ほどは「10万通貨で2回」ナンピンをしました。ここで、一度に投じる額を変えるとどうなるでしょうか。
まずドル円が120円のとき、5万通貨買います。118円まで下がったとき、また5万通貨買います。すると、119円のドル円ロングポジションを10万通貨持っていることになりますね。120円で10万通貨を持っていた場合、その後予定通り上昇すれば大きな利益につながりますが、117円まで下落した場合30万円の損失となります。
一方で120円での購入量を5万通貨に抑えることで、上昇した場合の利益は少なくなりますが、118円に下落した時点で5万通貨買い増しさらに117円まで下落した場合でも、20万円の損失で済みます。
また、その後反転して上昇した場合、細かくナンピンしたポジションのほうが早く損失を解消することができます。一度の売買で多くの資金を投じてしまうと、逆行した時に取りうる選択肢は損切りのみです。
もちろんそれも悪くはありませんが、明らかにドル円が上昇しそうな環境で一時的に下げているような局面の場合、ポジション量を制限したナンピンは決して悪手ではありません。
むやみやたらのナンピンは決しておすすめできるものではありませんが、適切に行うナンピンはかえってリスクが軽減できるのです。
ナンピンを正しく理解し考え方の幅を広げよう
今回は普段あまり目にしないナンピンのメリットについてお話ししました。
それでも、「ナンピンするくらいなら早く損切りしてリセットした方がいい」という方も多いでしょう。損切りのほうがより多くの人におすすめできる手法であることは私も否定しません。
ただ、「ナンピンも危ないばかりじゃない」と知っておくことで、考え方の幅が広がるのではないでしょうか。