先週「ECB」の「ドラギ総裁」がユーロ圏内の追加緩和を示唆したところからユーロが大きく売られました。この結果に対して私は「ドラギ総裁」のコメントも追加緩和を示唆したことも想定の範囲内のことですし、また追加緩和を示唆したことでユーロが売られたのも当然の帰結と思っています。
しかし、私個人はユーロに対して弱気には決してなれません。大きな銀行が軒並み弱気をしていますし、特に日本の都市銀行は足並みをそろえて弱気に傾いています。
本音でいえば、日本の銀行が足並みをそろえて弱気なら、過去の経験則からはたぶん強いだろうな、とは思います。
つまり、世の中には資本というものが存在し、マーケットの上ではその資本は、お金=「債券」ともいいますし、株式、商品というカテゴリーが存在します。
その資本は、結局経済の拡大によって株式の金額は拡大、つまり上昇します。
しかし、商品相場においてはその上場商品のほとんどが原則、原料、素材、そして保管ができない食糧になります。ここで食糧の保管ができないと書いたのは、保管ができないということは何れ腐るということになることを強調したかったのです。商品相場は政府や民間がいくら努力しても生産を増やすことができないもの、つまり、有限なものになります。
つまり、政府や「中央銀行」が頑張って経済を上向かせるのにコントロール可能なのは、お金の流通量とその金利になるのです。お金の流通を増やすことによって、株式は上昇し、そして今、金利を上げようとするか否かを判断しているのがイギリスやアメリカになります。ここが現状になります。
しかし、よく考えてください。世の中に資本というものは、マネー、株式、商品というものが存在しているということを説明したのですが、マネーの流通が今、最高極限に達しているのです。
ですから、需給の関係からいえば、上記3種類の資本財のなかで一番価値がないのはマネーになるわけです。
つまり、今の状況ではFXが一番儲からない、というのが需給の関係においては成り立ちます。
参考までに「日本銀行」が緩和によって不動産ETFを買っているのも意味がわかりますよね。資本の中には私は書きませんでしたが、不動産は資本になります。お金の価値が減価しているので当然、不動産も上昇します。
なぜ商品相場は下落しているのか?
お金を粗製乱造すれば、需給が悪化して当然、商品相場も上昇しますが、逆に「CRB指数」はまだ安値を更新するでしょう。商品相場の価格は基本、ドル建てになります。円建てやポンド建てなどもありますが、ドルで交易をするのでドル建てが基本です。
ここでいうドルの価値というのは他の通貨の価値と比べての相対的な価値であって絶対的な価値ではありません。ドル円レートでみれば、円の価値はドルに対して120円なのであって、円そのものの価値ではありません。
つまり、円の価値というのは相対的に比較対象があって初めて価値が図れるのです。一方で株価や商品価格はそのモノの値段で、比較をしてその値段が成立をしているわけではありません。
つまり、絶対的な価値になるのです。つまり、ドルの価値が減価、増価することによって商品相場は成り立っているのでドルの価値の上下動によって商品相場は上下動しているのです。
しかし、商品の価値という絶対的な指標というのは上昇しているのです。マーケットで商品相場が下落をしているということはドルの価値が上昇している、すなわちその価格は単に通貨と一緒で相対的な面があるということです。
ですから、商品相場のマーケットは下落をしていますが、絶対的な価値は上昇をしているのです。欧米の証券会社や「ヘッジファンド」が昨今、ゴールドを推奨するのはそういった意味です。
需給面で悪化しているマネーをたくさん持つよりも、需給がタイトなゴールドを持ったほうがより絶対的な資産価値は上昇しているので、ゴールドが長期的にみてマネーの需給が改善しない限り暴落することはありません。
ただし、実際の資本の金額としては減る可能性もありますが、それは相対的な価値の問題です。
相対的な評価と絶対的評価を理解する
こんなことを覚えても仕方がないと反発する多くの投資家さんは少なからずたくさんいます。
しかし、みなさんが普段触れている、テクニカルオシレーターには、相対的評価の指標がたくさんあります。代表的にはなんでもいいのですが、パーセンテージ表記をするオシレーターはすべて相対的評価なのです。パーセンテージの満点は100%とすると50%はちょうど中間という解釈になります。
つまり10の50パーセントは5になりますし、10000の50パーセントは5000になります。頭の中では理解するけれど、実際の金額ベースでみると、すごい金額になるケースもあります。
日本の「GDP」7-9月期はマイナス1.6パーセントですが、実際の金額ベースを考えたことはありますでしょうか?日本の「GDP」総額は約500兆円、その1.6パーセントは?1パーセントで5兆円、1.6パーセントで8兆円ですよ。
つまり日本は7-9月期で8兆円も稼ぐ能力を失ったのです。すごいことだと思いませんか?たとえばランド円のレートの1パーセントは0.1円くらいですよね。ドル円のレートの1パーセントは1.2円ですよね。この1.1円の差に驚愕を覚えるトレーダーはたくさんいると思います。
テクニカルの指標は、パーセンテージ表記がほとんどですが、何に対して、何パーセントなのか?を考えなくては必ず大きい間違いを起こすのです。つまり、絶対的な金額ベースに当たるものを考えて活用をしないと、テクニカル的な騙しにあうのです。
それを負けた投資家はテクニカルがそう語って、それを信じて負けたのだから仕方ない、といいます。
違いますよ、あなたが思慮深く考えないから、あなたが間違えたの!テクニカルの解釈を間違えたのは、テクニカルではなく「あなたの脳みそ」なのに、テクニカルの所為にしている投資家は本当におめでたい、と思います。
だから、マーケットのテクニカル指標というのは大変便利なのに、それを活用できない投資家は99パーセント以上ですよね。たぶん、このことを理解している投資家はほとんどいませんので、あなただけが理解してなかったわけではありません。
FXでの評価は相対的評価をファンダメンタルズとして活用すればいい
通貨の評価は相対的なものである、ということは理解できたと思います。
翻って、株式や不動産は絶対的な評価なのであるということもある程度理解できたと思います。
その割り算が今のユーロドルのレートですよ、と何度も言っていると思います。
このユーロドルのレートというのは、結局、パーセンテージ表記をしてもかまわないということも少し、考えれば理解できるでしょう。
つまり、この計算をすれば、ユーロドル相場がパリティーを割ることなどありえないという認識が日本の銀行は理解できないからパリティーを割ると臆面もなく新聞にアナリスト評価として見解を書くのでしょう。
所詮、銀行のディーラーなどその程度のものです。ディーリングに従事したことがある方、といっても最近ではなく、10年以上前に、はわかるでしょうけど、顧客に向かっていれば自動的に儲かるのです。
もちろん、その前に理解しておかなければいけないことは山ほどあるのですが、基本はそれです。
つまり、客が買ったら、自己勘定は売っておけばいいのです。投資家の9割は損をするのですから、自動的に儲かります。それに対して、リスクゼロの取引がHST取引やアルゴリズムになるのです。話が逸れましたが、ユーロドルのレートは結局、相対的評価なのです。
つまり、この世界は相対的評価で物事を考えればいいのです。なぜかと、いえば、全世界の通貨が全部でいくらあるのか、という正確な数字はでません。しかし、株式や債券などは全部の発行数は発行者がウソをつかない限り、正確な数字ははっきりわかります。
つまり、株式や債券の世界では相対的な数字、つまりパーセンテージなどの評価はあまり重視されません。なぜなら、絶対的数字がわかるのでそれで検証したほうが正確な数字がわかるからです。しかし通貨の世界では発行量がわからないので、すべて推測で語るしかありません。
この考えを下に金融緩和を考える
通貨の世界での考え方はその量が「GDP」に対して何パーセントで世界最大の緩和量を誇る国、ないしは経済圏が一番最弱の通貨になります。それを等号、不等号で表すと以下のようになります。
日本>アメリカ>ユーロです。
そう「GDP」総額に対して一番、緩和を行っているのが日本です。参考までに、前の日本銀行総裁の「白川方明氏」は過去20年間でものすごい緩和をしているのに、直近の3年の緩和量が少ないから、緩和をせよ、というロジックはおかしいと主張して安倍さんに更迭されました。
正直いって、アホみたいな緩和をやってきて残ったのは借金だけじゃないか、と思っています。もうひとつ付け加えるなら、「白川方明氏」は任期満了による辞任ですがあのときの世論の雰囲気は明らかに更迭です。
また、話がそれましたが、要するに日本が一番緩和を行っているので、世界最弱の通貨を不動のものにしています。つまり、裏を返せば、最近120円程度でドル円相場が膠着しているのは、もっと緩和をしなければ円安にいかないということを示すものです。
つまり、アホな評論家はまだまだ円安にいくと能天気なことを言っていますが、通貨の価格の現在の決定要因の緩和による通貨量の拡大がなければこれ以上円安にはいかないでしょう。
もちろん、日本で最悪な事件があったり、アメリカの景気がよくなったら円安にいくでしょうが、現時点ではそういった臭いはしませんよね、誰が考えても。参考までに金利差などで為替は動きません。
結果的に金利差が有効なときはありますが、金利上昇の開始時期にはそれとは真裏の傾向に行きやすい結果は経験則からよく私は存じ上げていますので、そんなことを言っているプロと評する専門家や評論家にはアホと言ってやりたいわけです。
裏を返せば、榊原財務官、日銀の日米協調介入と小渕さんの緩和で手痛い目にその状況でそう考えあっていることもここで懺悔をします。もう昔の話ですからいいでしょう・・・。
ここから円安に行くのには、追加緩和しかない、と個人的には思います。一方でアメリカとヨーロッパ。「ドラギ総裁」が追加緩和を示唆しましたが、その規模はどう考えても前回と同程度か、それ以下と考えるのが普通でしょう。
同程度の緩和をしてもパーセンテージの上で、アメリカをしのぐことはできません。
つまり、追加緩和を実施してもアメリカ>ユーロの実態は変わりがありません。この不等号で右にユーロがあるのは緩和の量が少ないという意味です。国力ではありませんので、勘違いしないでください。
日本>アメリカ>ユーロ左にいけばいくほど、緩和の量が増え右にいくほど緩和の量が少ないという意味になります。
つまり、通貨の強さを不等号で表すと、ユーロ>ドル>円になります。
だから、ユーロドルがパリティーを割りませんよと、私は言っているのです。
ついでに、緩和量をポンドと「中国人民元」を付け加えると。日本>アメリカ>ユーロ>イギリス>中国になります。
だから、ポンド円が強く「中国人民元」が高すぎるという市場評価になるのです。
今後ユーロが緩和を実施した場合
ユーロが緩和をしても、アメリカの緩和量に叶うことはありません。
つまり、ユーロ>ドルの状態は続くことになるのです。間違ってパリティーを超えることもあるかもしれませんが、すぐに戻るでしょう。
むしろ、緩和発表によって、売られたところは買い場になるのでしょうね。
ほかのユーロ強気の理由
ユーロクロス相場の月間足をご覧ください。たとえば、ユーロオージーなどの月間足は「リーマンショック」発生後や、南欧債務危機の最中など暴落に次ぐ暴落なのに、やっと反転をしてきています。
ユーロが悪い、悪いと騒ぎながらも値は戻しています。ほかの通貨も押し並べて同じです。ユーロスイス、ユーロポンド、全部戻っています。経済が悪いのに、資金は全部ユーロ圏内に帰っています。
この現象は買戻しかもしれませんので、二番底がある可能性もありますが、基本的にはユーロに資本が却ってきています、レパトリの現象が起こっています。
「金融緩和」をやって、日本やアメリカでは海外に資本が流出をしましたが、今回のユーロが追加緩和を行った場合、ユーロ圏内の再投資に回される可能性が非常に高いのです。
なぜなら、自国の通貨が通常なら値下がりの「金融緩和」を行った場合起こるのですが、ユーロの場合は上昇しているので海外に投資する意味がなく、自国通貨が強くなっているので自国に投資をするのが自然なことになります。
つまり「金融緩和」というものは、必ずしも通貨安を併発するものではなく、資金がいっぱい街中にあふれてそれが株価上昇の誘因になることがあるということです。投資家の中には「金融緩和」イコール通貨安、と考える向きが大半であると思いますが、通貨安は必ず起こるものではありません。
これはおそらく、ユーロ、ないしは「ECB」がマイナス金利を適用していることも要因になると思います。
内部留保や、預貯金を使え、と奨励しているのですからよくわかっている自国に投資をしようとしているという投資家の行動要因によると思います。
たしかにマイナス金利にすれば、お金の価値は日々減っていくので、時間をかけて投資するよりもよく知っている国内に投資が向くのは人々の投資行動に合理性があると思います。
ユーロ崩壊のシナリオ
今のユーロの政治情勢を考えると財政統合をしなければ、おそらく真のユーロ経済圏というのは登場しないと思います。私も、この財政問題を解決しない限りユーロの崩壊は時間の問題であろうと思いますが、でも現実のマーケットの方向はユーロ再見の道に向かっています。
なぜなら、ユーロが上昇しているからです。何が真実かはまだ結論は得ていませんが、直近の状況はユーロがパリティーを割りきるなんてありえないでしょう、というのが現時点での判断です。
(この記事を書いた人:角野 實)