中国で稼いだお金は「本国に持って帰ることができない」というのが現在の中国社会事情になります。
ですから、今でも中国投資を積極的に呼び掛けるアナリストは何も知らないのではないかと思います。
通常の感覚でいえば、儲けてほしいからアナリストをやっているのでしょうが、中国投資を推奨するというのは中国政府とグルになって投資家を騙そうとしているのではないか、と勘繰りたくなります。
実際に、アメリカの企業は積極的に中国から撤退しています。お人よしの日本企業だけが一生懸命、投資をしています。
SDR制度への組み入れ
国連の「SDR」に組み入れられると、人民元の流通量は飛躍的に高まります。
今でも、東アジアでは多く流通しているのですが「世界から認められた人民元」ということで、もっと流通をするでしょう。IMFのラガルド専務理事は中国・人民元のSDR入りは時間の問題と明言しており、この10月には正式に加入するかどうかの審議がされます。
アメリカは反対をしていますが、おそらく加入は認められるでしょう。その時に多くの人民元を買ってほしいのが北京の意向になります。その時点で人民元が高かったら、あまり買えませんよね。だから安くしたのでしょう。
しかも、国際合意のもとの条件での切り下げです。その上、AIIB設立の資金振り込み時には人民元高です。上手いよな、と本当に思います。多少、人民元安によって今回の株の件もありますので人民元の海外流出はあるでしょうが、SDRに組み入れられればそれ以上に外貨を獲得ができます。
忘れてはならないこと
最近、タイ、インドネシア等の政情不安が報道されています。シンガポールも独裁国家ですが、最近は揺らいでいます。これは、何からきているかといえば、はっきりいえば「中国の経済成長減」からきているのです。
つまり、相次ぐ中国の経済成長減から東アジア諸国は日本よりも、もっと多く中国依存をしているわけですから、政情が不安定になってきています。実際にGDPはマイナス成長が続き、経済は停滞しています。その上に自国通貨安です。
これは、中国が実力以上の通貨高政策を維持しているのですから当たり前です。ですから、東アジア諸国はこれ以上、中国依存度をしていては危険という発想からドルを必要以上に買っています。その反動でドル円レートは円安になっていたのです。
この4月に何があったか?
この4月に「アメリカの経済成長が予想以上にドル高によって進まない」と、アメリカ・イエレン議長からの警告がありました。それを受けて、先進国諸国の通貨は一斉にドル安になっていきました。
ただし、発展途上国と日本円だけはドル高の訂正相場が起こりませんでした。私はこれを見越して円高にポジションを取っていましたが、大して取れませんでした。
つまり、先進国ではドル高の訂正相場が続きましたので、それなりにポジション調整が進みましたが、日本円と東アジア諸国はドルを買ったまま放置されています。
今回、中国・人民元は4パーセントの切り下げを行っています。それによって東アジア通貨のドル高・人民元高の訂正が進まなければ、9月上旬にもう一段の人民元安の政策を北京はやってくるでしょう。
なぜなら、中国もグローバル化が進んでいますので周辺諸国の経済成長は自国の成長の直結します。
ですから、体制を立て直してもらいたいという意図が見え隠れします。先日のタイの警官隊とデモ隊の衝突などは経済不調の典型的な例になります。
今までは、中国人民元高→東アジア通貨安→ドル高→円安の構図になりましたが、今回の中国人民元安によって、この高安が全部塗り替わるくらいの可能性がある、北京の通貨政策の変更になるのです。
もし、ならないのであれば、資金を集めるためなら北京は喜んで一層の人民元安を進めるでしょう。
(この記事を書いた人:角野 實)