国連世界経済社会局が発表した最新の「世界人口展望報告」によると、現在約73億人の世界人口は2050年には97億人、2100年には112億人に達すると言われています。
これは2013年に発表された同報告の予測数値よりも速いペースで人口増加が進んでいることを示しています。人口は今後の世界経済の行方を考える上で非常に重要な指標です。
人口は経済成長を支える重要な要素の一つであり、これまでの経済成長のかなりの部分が人口増加に依存しているからです。
GDPに大きな影響を及ぼす「人口」と「資本」
GDP をはじめとする経済成長を表す指標は数多くあるのですが、経済成長を実現するための基本要素は「労働」「資本」「技術革新」の3つです。
資本と技術革新は不確定要素が多く、将来の経済予測では「労働」の部分に大きく依存しています。
労働は「労働人口-非労働人口」で算出されるため、結果今後の経済成長は「人口」の依存度が非常に高くなっています。今回は最新の人口動態から世界経済の行方を考えてみたいと思います。
2022年にはインドの人口が中国を抜いて世界最多14億人に
「世界人口展望報告」によると、中国の人口は2030年までは現在の13億8000万人からほぼ変動しないものの、そのあたりをピークにして徐々に減少します。
しかし、インドは2022年までに現在の13億1000万人から14億人まで増え、2030年には15億人、2050年には17億人に達すると予測されています。
引用 by :monoist
また、同報告ではナイジェリアの人口が2050年までにアメリカを抜き、現在の7位から3位に浮上する可能性についても触れています。
アジア・アフリカの人口動態には長年注目が集まっていますが、地域別の予測では現在42億人の人口を擁するアジアが将来にわたっても最大人口を維持するとしています。
しかし、アジアも2050年の50億人強をピークに減少に転じると予測されています。一方、現在10億人程度のアフリカは2100年には4倍の40億人に達する見込みで、2100年における世界の総人口の約90%がアジアとアフリカの2地域で占められるという事態に陥ります。
(出典:NewsVision)
人口の増加がそのまま経済規模に比例するわけではありませんが、人口増加地域は生産地・消費地として存在感を増すことは間違いありません。
経済成長が人口に依存するなら、2100年には現在と全く異なる経済勢力図が見られるかも知れません。先進国は総じて人口の減少が続き、現在1億3000万人の日本の人口は2100年には8500万人を切ってしまいます。唯一の例外がアメリカで、現在3.2億人の人口は増加を続け、2100年には4.6億人に達する見込みです。
人口動態から世界経済の行方を考える
中国はGDPでは日本を抜き、世界2位の経済大国となりましたが、実は一人あたりのGDPの数字は日本の1/5、アメリカの1/10程度しかなくまだまだ貧しい国と言えます。
この状態で2030年をピークに人口が減少することを考えると、長期的な中国の経済成長には懐疑的です。また、日本の人口減少のスピードが極めて速いことも特徴で、このままでは日本は貧しくなる一方です。
人口動態による経済成長予測で最も優位なのはアメリカです。アメリカ国債を保有する日本・中国という不安要素を抱えるものの、今の状態を維持することができれば、世界経済の盟主として今後も半永久的に維持できる可能性があります。
世界経済の先行きを考える上で、波乱要素は「インド」一人当たりのGDPは中国の1/5程度しかなく混沌としていますが、人口増加により順調な経済成長が予測できます。ここに「資本」と「技術革新」が加われば、世界の経済大国に成長するかもしれません。
単純な人口増加よりも大切な人口構成
これまで単純な人口増減について見てきましたが、経済成長にはその人口構成が大きく影響します。
最初に触れた「労働=労働人口-非労働人口」の数式で考えると労働人口比率が重要です。
現在、いわゆる新興国では労働人口が人口全体に占める割合が増大する「人口ボーナス期」にあり、社会としての活力が増す状態にありますが、2025年以降急速にその割合が減少する「人口オーナス期(onus=重荷)」に突入することが指摘されています。
日本をはじめとする先進国の多くはすでに「人口オーナス」状態に陥っていて、有効な対策はたてられていません。世界経済の成長を考える上では国どうしの競争も大事ですが、今後100年は世界全体で人口問題に取り組むことが重要です。