いろんな状況で合理的に判断することができていますか?突然ですが、つぎのような場面に遭遇した時、投資家であるアナタはどんな行動をとりますか?
米ドル/円で1ドル=125円の時に仕込んだロングポジション。思惑とは反対に円高ドル安方向へ推移。今のレートは1ドル=120円となっています。
この後の予想として、
① 20%の確率で反転し1ドル125円に戻す
② 80%の確率でそのままドルが下落し1ドル=115円となる
この問題の解は記事の最後で述べるとして・・「FXはゼロサムゲームか否か?」という議論は過去にも活発に行われています。今回はそれが主題ではなく、ゲーム理論を少しかじることでどんな状況に置かれても合理的な判断ができるのではないかというアプローチです。
FXはゼロサムゲームか否か?
ゲーム理論における「ゼロサムゲーム」とは、参加者全員の損得を合計するとゼロになる状況のことです。例えば、「3人で1,000円ずつ出し合ってじゃんけんをし、勝った人一人が3,000円全部もらう」といったものが該当します。
この場合、勝った人は差引2,000円の利益、残りの二人は1,000円の損失。全ての損得を加えるとゼロになります。
ゼロサムゲームだと、ほかの参加者とのスキルの優劣がない場合、ゲームを繰り返すうちにトントンに近づきます。じゃんけんはスキルの差が出にくいため、このゲームを繰り返していくと収益の期待値はゼロで言ってみれば時間の無駄でしかありません。
同じゼロサムゲームでもポーカーやブラックジャック、麻雀などでは明確にスキルの差が出ますので、特定の参加者が勝ち続け、他の参加者が負け続けるということがあり得るのです。
FXは売り建てた側の利得と買い建てた側の利得の合計は常に零になるので「ゼロサムゲーム」とされています。これを外国為替取引全体で捉えると、実需の為替取引や政府の市場介入などもあるため、非ゼロサムゲームであるとも言われているのです。
ゲーム理論で自分のトレードを見返してみる
ゼロサムゲームの場合、最も大切なことは「ミニマックス戦略」です。トレードでは利益の方にばかり目が行きがちですが、実際は損失を少なくする方に注力した方が成功すると言われています。
ケースA)
100万円の投資金で30%の損失を出してしまった。その後、持ち直して30%取り戻した。現在の収支はどうなっているか?
直感で答えるとトントンになりそうですが、マイナスです。100万円から30%の損失で70万円に、その後30%値上がりしたので70万円×1.3=91万円となります。
ケースB)
100万円の投資金で30%の利益が出た。その後反転し、30%の損失を出してしまった。現在の収支はどうなっているか?
こちらの場合は100万円から30%の利益で130万円に、その後30%失ったので130万円×0.7=91万円となり、やはりマイナスになってしまいました。
これらのことは投資におけるひとつの真実を映し出しています。
つまり「利益は減りやすく、損失は回復しにくい」ということです。
ケースAの30%の損失分を取り戻すには100万円÷70万円=1.43、つまり43%の回復が必要な計算です。逆のケースBの場合だと30%の利益を打ち消すには100万円÷130万円=0.77、つまり23%でせっかくの利益が吹き飛んでしまうのです。
これらの事象を起きやすい順に並べると、
23%(せっかくの利益を飛ばす)>30%の利益を出す>43%(30%の損失を出すが、回復する)となり、利益はいとも簡単に消失し、一度抱えた損失はいかに回復が難しいかを表しています。
だからこそ、相場の世界で長く生き残り利益を出し続けるためには「損失を最小限にする」というミニマックス戦略が非常に重要になるのです。
ミニマックス戦略で「損切り」を考える
ミニマックス戦略を実際の相場の場面で実践するための方法には「損切り(ロスカット)」があります。
つまり損失が拡大しないうちに損失を確定させてしまうということですが、先ほどの例ケースAで考えると、10%の損失時点で損切りしたとすると手元に90万円。その後、取り戻すためには100万÷90万円=1.11、つまり11%の回復ですむことになります。
先ほどの計算で見た通り、30%の損失に最後までつきあってしまった場合、43%もの回復を期待しなければならなかったのですが損切りしたことにより11%の回復を待つだけでよくなったのです。期待する回復率は1/4程度になりました。損切りしたことによって次の動きもとりやすくなります。
このように「ゲーム理論」をかじると、少しは自分の不合理なトレードスタイルを見直すこともできます。興味のある方は夏休みの間に研究されてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、記事冒頭の問題ではもちろん「損切りする」が正解です。
レートの期待値も(125×0.2)+(115×0.8)=117で、少なくとも現状より収支状態は悪化する可能性が高いです。