国際収支とは、1年あるいは四半期といった期間での国全体の「対外経済取引」を集積したもののことをいいます。
いわば、海外との財、サービス、金融商品などの取引を複式簿記に記載した内容ともいえるものです。この国際収支が国内的に非常に注目を浴びるようになってきたのは、以前は貿易黒字国であったはずなのに、今や日本が年間で13兆円を超える「貿易赤字国」に転落してことにはじまります。
こうした状況は急激に進んだわけではなく、長年におよぶ円高が加工組み立て産業の海外生産移転を生み出したことが大きな原因となっていますが、東日本大震災以降エネルギー輸入のコストが非常に高まったこともこうした状況を助長しているのです。
このような赤字状況は円安によりさらに大きくなる傾向があり、エネルギーコストの上昇は名目インフレ率を高めることに寄与するといった余分なメリットも創出するようになっています。
ただ、海外拠点で生産をして利益を上げている企業からの一時所得収支、つまり利益の国内親会社への還元や金融収支などは円安により引きあがることから現地生産比率の高い企業の収益率を改善させるというメリットもあるため、一方的にこの貿易赤字が増えることがデメリットにはなっていない状況にあります。
特に国際収支は一般的な財務諸表における損益計算書の形式ではないため、経常収支赤字は必ずしも損失を出していることにはあてはまらず、損得勘定を見る指標ではないことは予め認識しておく必要があります。
産業構造の変化にともなって国際収支の内訳が大きく変化したことは間違いなく、このような状況を正確に評価していくことが必要となります。
FX投資視点で国際収支を見た場合、貿易赤字分は確実にドル買い需要を招いていることになるため、ファンダメンタルズ的に見てドル高円安という基調が極めて強くなっていることを意識しておく必要があります。