レパトリエーションとは、海外に展開している自国の企業が本国に資本や利益を送還することを言います。通常はレパトリなどとも略されて言われるものですが、これはどこの国でも行われるもので、企業の通常のレパトリは年度末や半期末などに多く行われることが一般的です。
日本企業のレパトリは3月や9月が多くなりますが、外資系の企業の場合にはカレンダーイヤーが会計年度になりますので、6月や12月に多く見られることとなり「ロンドンフィックス」に特定の通貨ペアの取引が非常に活気付くといったことも見られます。
ただ、このレパトリが出るのは普通の決算月だけではなく、自国に特別な事態が起きたときにも多く発生するのがこれまでに確認されています。
たとえば大きな災害が起きて、自国内で大きな資金が必要になったような場合には実際にレパトリがかなり行われることになりますし、地政学リスクの問題で資金を回収したいという動きが出た場合にも一定額以上のレパトリが発生することが確認されています。
東日本大震災では円高の原因に
一方こうしたレパトリ狙いで為替相場が動くこともあるのです。2011年3月東日本大震災が起きた直後もレパトリ需要がでるのではないかというファンドの読みから、災害国であるにも係らず日本円が思惑で買われるという事態が起きています。
実際にはこうした災害の直後にすぐ資金が引き上げられることはかなりレアケースですが、市場の思惑から買われてしまうということもあるのです。欧州などでは、地域紛争や戦闘が行われた際に、本当に多額のレパトリエーションが起きることがあるため、とくに海外の投機筋はこうした発想を強く持っているといわれています。
さまざまな要因が絡むレパトリ
また、投資などを引き上げて資金を自国に戻す際に特定の通貨を利用した「キャリートレード」を行っている場合には、まず資金をその通貨に換えて返済することが必要になることから特定の通貨が買われるということも起こります。
たとえば円は今世界の通貨の中でもユーロとともに、非常に安い金利で資金調達ができますので、円キャリーでトレードをしている投資家が増えています。
しかしリスク回避で投資を引き上げるという動きが出た場合には、まず調達資金の円を返済することが必要になりますから、円買いが起きることになり「キャリートレード」の巻き戻しの場合にはその機軸となる通貨に買い戻しが入ることも考えておく必要があるのです。
したがって、レパトリエーションといっても単純に海外にある金融資産や資金を戻すだけではなく、それに伴う付帯的な行為が為替に多大な影響を与えることについても念頭において取引をすることが必要となってきます。