「政府系ファンド」とはソブリンウエルスファンド(SWF)などとも呼ばれるもので、各国の政府自体が出資する投資機関として投資を行う存在です。
2015年秋口から2016年初頭にかけて、原油の輸出で儲けた資金を使った中東系のソブリンウエルスファンドが日本株から大きく撤退しはじめたことから、この政府系ファンドの存在が非常に注目を集めることとなったのです。
様々な国が政府系ファンドを保有
この政府系ファンドは調べてみますと、結構多くの国が保有していることがわかります。
まず産油国はほとんどなんらかの形でこの手のファンドを保有しており、アラブ首長国連邦やサウジアラビア、クウェート、カタール、中国、ロシア、シンガポール、マレーシア、ノルウェーなどが巨大なファンドを保有しています。
これまで原油や天然ガスなどの輸出で得てきた莫大な収入を投資に回してきたことから、どのファンドも想像以上の資金を運用しているといわれています。
こうしたファンドの運用姿勢は、株式や不動産などのリスク資産に積極的に運用するタイプもあれば、短期債などの安全資産で安定的に運用するタイプもあり、国によって大きく異なりますが、日本の優良銘柄の株などにかなり多額の資金を投入してきた経緯があり、国内にもかなりの資金が投入されていることがわかります。
原油価格の下落で多くのファンドが資金を取り崩すことに
こうしたソブリンウエルスファンドの投資姿勢が急変したのが2015年から始まった「原油価格の下落」です。
最大手産油国のサウジアラビアでも原油の輸出価格が著しく下落したことから、国の運転資金が枯渇するようになり、それまで長期保有してきた株式を一斉に売却したことから、米国の株価や日本の株価が低迷するという事態を招くことになったのです。
このような有価証券の一斉売却は過去には見られなかったことだけに市場は相当動揺することになり、しかも価格のレベル感と関係なく一気に換金に動いたことから株式市場は異常とも思えるほどの下落を示現することとなりました。
現在は原油価格が一息ついたことや、最大のファンドをもつサウジアラビアが国営石油会社であるアラムコの国際部門を「IPO」させることで多額の資金調達ができる見込みとなったことなどから、SWFの投資資産売りは一息ついた状況となっています。
しかしこうした「政府系ファンド」が一気に資金を引き上げることになると、信じられないぐらいの株価下落を引き起こすことがあらためて認識されましたので、今後の動向については注視する必要があります。そのぐらい市場のインパクトの大きい存在であることがわかります。