ウォールストリートジャーナルはダウジョーンズ社が発行する米国の日刊経済新聞です。1889年の創刊当初は紙の新聞としてスタートしていますが、今ではオンライン版を併用しており、アメリカ、欧州、アジア版など地域版を多く発行しています。
こうしたデジタル化は1996年から進んでおり、投資ファンドやインターバンクがリアルタイムで視聴しているヘッドラインにも多くの記事が登場することから金融市場には大きな影響力をもつ存在となっています。
アルゴリズムが読み込むことで大きな影響を与える存在に
金融市場でウォールストリートジャーナルが重要度を増しているのは、老舗の経済新聞社であることも確かですが、最近では株式や為替売買のためのアルゴリズムがこうした新聞社のヘッドラインのテキスト配信をいち早く読み取り、その内容に即して売りや買いの取引をしてくることから、いい意味でも悪い意味でも市場に影響を与える存在になってきているのです。
こうしたテキストのヘッドラインは世界各国に関する報道に反応することになりますが、日本語のテキストを英語化するときにニュアンスを変えてしまったり、正確に訳していない、また憶測報道の域を出ないような内容でもアルゴリズムがまともに反応して売買をしてしまうことから、相場を大きく変動させる要因になってきており、特に誤報やニュアンスの間違った報道で相場に多大な損失を与える存在にもなっているのです。
有償化のネット会員を増やすため無理な報道も
ブルームバーグのような報道機関はすべての報道を無償で提供していますが、ウォールストリートジャーナルは有償のネット配信が基本となるため、購読者を確保するためにスクープ記事を出そうとする傾向が強く、日本国内ではブルームバーグも同様に独占記事を積極的に配信しようとすることから競走上無理のある内容も多く配信するようになっているのです。
2016年に入ってからは日銀の政策決定などをめぐってこうした憶測やほとんど裏の取れないような報道も過熱気味に掲出されるようになっており、そのたびにアルゴリズムが余分な売買を繰り返し、相場をかく乱する動きが頻発するようになっていることが大きな問題になりつつあります。
これまでの報道では人が読んでその内容の信憑性について判断した上で投資行動につなげてきたわけですが、アルゴリズムはあらかじめ決められたワードに反応することから、そもそも判りにくい日本語表現を英語に直した場合には元の日本語記事とニュアンスの違うものとして英語のヘッドラインを飾ることが多く、多くの投資家から顰蹙を買う存在になりつつあるのです。