シティ・オブ・ロンドンは通称シティと呼ばれ、英国・ロンドン市(グレーターロンドン)の行政の一部であるとともに、中世からの長い歴史のなかで数々の特権を認められた“自治都市”としてその機能を発揮してきた街です。
よくニューヨークのウォール街とも比較されますが、この街は完全に行政上のひとつの単位でありタックスヘブン発祥の地でもあるのです。シティ・オブ・ロンドンの正式名称は、シティ・オブ・ロンドン・コーポレーションであり、ここで言うコーポレーションとは、刺繍業組合や皮革加工業組合など1000年も前から存在している123もの同業組合(ギルド)の共同体として存在する実に由緒ある街ということができます。
テムズ川に沿ったウォータールー橋とロンドン橋を東西の両端とする約2キロ平方メートルの比較的狭い一角の地区がこのシティであり、シティグループやHSBCなどの高層ビルが建ち並ぶ再開発地区カナリーウォーフやヘッジファンドの集まるメイフェアなども含めて最近ではシティと呼ばれるようになっています。
しかしながら、このシティは金融取引の金額とシェアでは世界最大級の存在であり、国際的株式取引のほぼ半分、店頭デリバティブ取引の45%程度、FX取引では35%程度を担っており、その取引規模は名実ともに世界一であり、NY市場をはるかに凌ぐ存在となっているのです。
為替相場でもロンドンタイムは実需を含めて大きな取引が行われており重要な位置を占めていることが理解できます。
英国のEU離脱でその運営に大きな問題が生じる
これまでシティは英国がEUに加盟していたとでEU圏はすべて国境をまたいで英国から売買のオペレーションを実施することができたのですが、英国の離脱で、別の国の扱いとなり、これまでの機能をそのまま発揮できなくなる可能性がきわめて高くなっているのです。
一部の金融機関ではフランスのパリやドイツのフランクフルトへの拠点の移動を検討しはじめていますが、国民的な資質としてイギリス人がパリやフランクフルトでやっていけるわけもなく、BREXITに関してはもっとも頭の痛い問題ガ浮上しつつあります。
これはEUサイドがなんらかの形で譲歩すれば解決する問題でもありますが、シティだけEUに残留するなどというバチカンのような話も飛び出しており、ここからどのような解決方法を見つけることができるかが注目されています。
一部の金融筋からは結果としてシティは残るという楽観的な見通しもでていますが、そのぐらい他に移して機能することができないぐらい統合化がはかられているのがシティの現状であり、いまさらながらに世界の金融センターとして大きな力を発揮する存在であることが認識されるようになってきているのです。