テーパリングという英語の言葉の本来の意味は先細りであるとか次第に先が細くなることを意味しているものですが、この言葉が金融市場で頻繁に使われはじめたのは、米国FRBの3回に及ぶ金融緩和が終了し縮小段階に入ったときからです。
2012年9月から始まったQE3においてFRBはその後7回にわたり毎月850億ドルの資産買い入れを100億ドルずつ減らしていくという文字通りのテーパリングを実施することになりました。
最終的には2014年10月に債券の購入プログラムを完全に終了しています。ただ買い入れ額を徐々に減らしはしましたが、購入した資産を売却してバランスシートの縮小を行うところまでは実施していないのが現状で、縮小は今後に実施の予定となっています。
FRBがこのテーパリングという言葉を使い始めてから、ECBなどほかの中央銀行で債券の買い入れが減少していくことを同様にテーパリングと呼ぶようになってきており、金融業界では中央銀行の政策手法としてこの言葉はかなり定着することとなっています。
中銀としてはいかに市場の混乱を起こさないようにするかが課題
量的金融緩和というのは非伝統的な手法と呼ばれるように金利だけの調整ではコントロールできない市場にさらに緩和措置を実施することで活性化するプログラムとなってきたわけですが、この手法を実施してきた米国も欧州も日本もこうした緩和政策を無事に終焉させた経験をもつ中央銀行は存在しておらず、あせらずゆっくりと蛇口を閉める動きをとれば市場に問題が起こらないかどうかはまったくわからない状況にあります。
したがって市場に投入する資金を徐々に少なくするところまでは、問題が起こらないとしてもここから投入した資金自体を縮小して中央銀行のバランスシートを小さくしていったときに本当に影響がないかどうかはまだやってみないことにはわからない状況にあるのが現状です。
ゼロ金利やマイナス金利まで導入した政策を巻き戻すのも相当慎重な姿勢が必要で、市中から過剰に流動していた資金が消えていくことになると大きな変化が起こるリスクも依然として残されることになるのです。
FRBに次いで欧州ECBもこのステージに入ろうとしており、中央銀行の金融正常化が一気に進もうとしている状況ですが、過去に市場の暴落が起きた年は必ずといっていいほど金融当局が政策を間違ったことに起因しているだけに、これからのQEの巻き戻しが本当に成功するのかどうかが世界的に市場関係者の懸案事項になってきているということができます。