みなさんは「バイナリーオプション」という言葉をご存知でしょうか。
株式や為替などの取引方法のひとつで、FXと同じ業者が提供していることもあるため、名前くらいは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今回はバイナリーオプションについてまとめました。
バイナリーオプションの基本
バイナリーオプションのバイナリーとは「binary」であり、二進法のことを指します。
オプションはもちろん「option」であり、選択肢のことを指します。2つを合わせて、「1か0かを選択する」つまり、「条件を満たすか満たさないかを選択する」のが、バイナリーオプションなのです。
バイナリーオプションの投資先は多岐にわたります。株式や為替はもちろんのこと、金や銀のような商品もバイナリーオプションの対象となります。
ここでは為替を例にとって取引方法を紹介しましょう。バイナリーオプションでは、取引ごとにお題が出されます。基本的には、「○時間後に○○円に達するか、達しないか」のようなパターンが一般的です。
「2時間後のドル円は1ドル110円に達しているか、達していないか」といった感じです。
投資家は一定のお金を出してどちらか(もちろん両方買ってもいいのですが手数料を考慮する必要があります)を買います。設定時間の経過後、購入したほうの条件を達成すれば一定の額が戻ってくるという仕組みになっています。
一般的に、達成の条件が厳しかったり、残り時間がまだ先のものであればあるほど、条件を達成した場合により多くの金額が返ってきます。
このあたりは競馬の仕組みと似ていて、多くの人が勝ちそうだと予想する馬ほど勝ったとしても払い戻しは少なくなりますが、勝ちそうだと予想する人が少ない馬が勝った場合は、より多くの払い戻しがあります。バイナリーオプションもおおむねそのようなものだと覚えておくとよいでしょう。
一回の取引あたりで考えれば、ローリスク・ローリターン
それでは、バイナリーオプションが一定の支持を得ている理由についてお話しします。
それはやはり、「上か下か」を当てるだけでよいという単純さです。FXであれば上か下かを考えるのはもちろんのこと、どれくらいで利益、損失を確定するかも考える必要があります。
一方のバイナリーオプションでは、購入した時点でその条件を満たした場合にいくら返ってくるかが決まっています。FXで利確のタイミングが分からない、損切りがなかなかできないという方にとっては、買った時点ですべてが明らかになっているバイナリーオプションは、興味をそそられるものかもしれません。
特に損失が限定されているという点は魅力を感じる部分ではないでしょうか。損失が限定されるメリットがある一方、その分利益も限定されているのがバイナリーオプションです。
例えば、上述した「2時間後のドル円は1ドル110円に達しているか、達していないか」という条件において、現在のレートが109.5円としましょう。「達している」を購入し、ドル円が思惑通り上昇して時間までに110円に達したとすれば、それ相応の額が返ってきます。
ただし、110円ちょうどであろうが111円であろうが返ってくる額は一定です。FXであれば上昇すればするほどリターンは大きくなりますので、そのあたりはバイナリーオプションのデメリットと言えます。
「リスクを抑える分、リターンも抑えられる」のがバイナリーオプションなのです。
簡単ゆえにあっさりのめり込んでしまう危険も
さて、ここまでご覧いただいた方であれば、「バイナリーオプションは上か下かを予想するだけの取引で、損失も限定されるから安全」というイメージをもたれるかもしれません。
ただし、あまりに簡単過ぎるゆえに、ギャンブル感覚で安易に手を出してしまう人も多いのが現状です。上か下かを当てるだけとはいえ、チャートの形や水準、テクニカルや経済指標など、実際はFXと同等の知識を身につけた上で取り組むべきものなのです。
知識がない状態でバイナリーオプションに取り組むと、資金が増えれば調子に乗ってさらに投資し、資金が減れば熱くなって損失を取り戻そうと必死になります。
普通に考えればFXなどと比べてリスクの低い取引なのですが、国民生活センターからは、
「バイナリーオプション取引は、為替相場等が上がるか下がるかを予想するもので、一見すると簡単な取引に見えますが、リスクの高い取引であることをよく理解しましょう。短期間に繰り返し取引した場合、損失額が大きくなるおそれがあります。」
といった注意が呼びかけられており、安全に見えることが一種の落とし穴にもなっているのです。
※バイナリーオプション取引に関する国民相談センターに寄せられた相談件数
海外バイナリー業者の暗躍にも注意
さらに、最近問題となっているのは海外の会社によるバイナリーオプションです。
バイナリーオプションで検索するだけで、被害事例を多数見かけることができます。投資の知識が十分ではない投資家からすると、簡単さや多額のキャッシュバックを謳う海外バイナリー業者のほうが、より危険性は高いと考えます。
「10万円入金したらその同額をキャッシュバック」のような甘い誘い文句は、投資にある程度熟練した方であれば疑いの目をもってスルーするところでしょうが、ギャンブル感覚で投資をしようとする人ほど、その誘いに乗ってしまいがちなのです。
口座を開設して実際にキャッシュバックが振り込まれることもあるのですが、そのお金を出金するのに厳しい条件があったり、出金を申し込む窓口自体が分かりづらいケースもあります。
海外業者であるためその安全性を吟味するのも難しく、問い合わせをしようにも日本語対応がなされていないケースも多いという問題があります。
日本の法規制に基づかない業者を利用するのは避けたほうがよいでしょう。登録業者の一覧は金融庁のホームページで確認できますので、口座を開設する際には必ず確認するようにしましょう。
日本のバイナリーオプションには一定の規制がある
上下を予想するだけの中毒性の高さ、及び海外バイナリー業者の問題を受けて、日本では2013年に規制が入りました。
日本の規制に基づいたバイナリーオプションは、
1.取引から判定までの時間は2時間以上。(ただし、途中で取引することは可能)
2.権利行使価格は固定、オプション価格は変動。(○円より上か下かの○円の部分は変動しないものの、○円より上だった場合にいくらもらえるかの部分は現在のレート、残り時間などの応じて変動する。)
3.購入者が絶対勝てないゾーンを設けない。
などの条件のもとで運用されています。もともと投資とは熱くなるものです。熱くなる気持ちを自分の意志で完璧にコントロールできる人は皆無でしょう。規制が入ることは不自由だと考えがちですが、投資は安全性を第一に考えたいものです。
簡単にもうかる投資など存在しない
バイナリーオプションについてお話してきました。上下を予想するだけの単純さから、ゲーム感覚で始める方も多いことでしょう。ただし、バイナリーオプションはあくまでも投資のひとつです。FXや株式などと同様に、値動きの特徴や変動要因などをしっかりと学習し、取引に臨むべきでしょう。
最近もTwitterで、バイナリーオプションが簡単に儲かる手法であるかのようなつぶやき(おそらく業者の宣伝でしょう)を見かけました。投資に簡単に儲かる手法などないことを、改めて認識しておきたいものですね。