きのう書いたものをみてほしいのですが、ミサイル発射前のドル円高値は109.38円。その1パーセントの下落というのは、108.29円になります。日本時間にはこの1パーセントの下落は実現をしませんでしたが、欧州時間によってその値段を実現しました。
こんなのは私からみたら当たり前の話であって、それ以前に、きのうの北朝鮮ミサイル発射が行われたことは、たいていの場合、欧州時間やアメリカ時間で再度、その材料が蒸し返されるという傾向があるということをきちんと認識をしていない方は認識をするようにしたほうがいいと思います。
つまり、日本時間では1パーセント安を示現できませんでしたが、欧州時間にはその値段を示現してしまったということになります。
これは、何を意味するかといえば、AIのプログラミングなんて所詮、この程度のものであり、このことをきちんと理解していればきのうの発射などかんたんに対応ができたということなのです。
発射したからといって「日本のGDPに何の影響があるのか?」と冷静に考えれば「何もない。」発射の瞬間から2時間程度、経済活動が停滞しただけで、その「GDP」に与える影響は何パーセントなのか、を考えたほうが早いと思います。
つまり、現状は「何の影響もない」のに円高にいったと騒ぎ、訳のわからないコメントを発するアナリストなどアホ以外の何ものでもありません。何が言いたいかといえば、AIは経済事象を数字に転換することによってのみ稼働するシステムであって、北朝鮮の有事なんぞ数値化なんかできません。
けが人や死亡者がいなかった、というのをどうやって数字化をして、どこからデータを引っ張ってくるのか、そんなの相当なアイディアがなければできません。
また、幸いにして誰もミサイル発射に巻き込まれなかったですが、万が一、けが人などがいれば、AIはたくさんの誤作動を起こし、最終的には大損になるでしょう。
想定外のことが起きた
これは、私が何度も例証として挙げていますが、福島原発のときに気象庁や、東電関係者が言ったものです。要するに、有事の際には「過去のデータなんぞ何の役にも立たない」ということが立証された典型的な例になると思います。つまり、データにないことは、何も対処ができないというのです。
そんなものに運用を任せたら、いつ大損するかわからない、と個人的にはいつも思うのですが、平時に安定的な運用をしていると人間の脳は、いつでも大丈夫と錯覚をしてしまうものです。
もちろん、AIには我々にない、いろいろな特性をもっていることは認めますが、こんなものを絶対的な信用を置いてはいけない、ということです。今回の北朝鮮リスクというのは、「リーマンショック」後にいろいろな数学者、統計学者、物理学者が議論をしましたが、テールリスクと言われるものになります。
このテールリスクというのは平時でこのリスクが起こるのは1-3パーセントくらいの確率になりますが、この北朝鮮リスクが起こってから、いわゆりファットテールという現象が起こり、リスクが起こる可能性が高まるものなのです。
通常は1-3パーセント程度なのですが、北朝鮮がミサイルを発射してさまざまな緊張が走ることによってテールリスクが10-15パーセントに拡大をします。
通常は1-3パーセントなのですが、ファットテールになるとリスクが拡大するということになるのです。その平時のテールリスクとファットテールの境目というのはどこにあるのか?
それをAIに判断させる試みもありますが、どう考えても難しいのです。そもそも、このことを理解していない人が多いので、このことを理解していない人は「絶対的な信用をAIに置いてはいけない」ということを繰り返し書いて置きます。
円高の可能性も念頭に書いた理由
つまり理論的にいえば、このリスクが拡大した、テールリスクの懸念が増大した状態をファットテールというのですが、現在はその状況になります。
つまり、本来、このような事件が起こらない場合は、リスクが起こる可能性は1-3パーセントになるのですが、この状態になればリスクの確率が飛躍的に高まるわけです。
今までは、「ゆっくりと円安になっていれば問題ない」と記していましたが、今までのリスクと現在のリスクは違いますので、ポジションは変えなければいけないのに、私がきのう、記したように元のトレンドに戻るよ、といって、実際、戻ったことに対して、ミサイル発射以前と同じポジションを持つのは間違いだということです。
つまりヘッジやロングの数を減らすという行動ができない方が過半ではないか、と思うのです。リスクの度合いが変わっているのに、なぜ、同じポジションなの、と私は思います。
今後の展開
アメリカの「GDP改定値」が今夜発表で「0.1ポイント上方修正予想」になります。ここの考え方は非常に難しいのですが、4-6月期は非常に好調だったのですが、7-9月期は私が書いているようにあまり好調ではないのです。
住宅価格は上昇をしていますが、売れ行きが悪い、しかも9パーセントも。価格の上昇を相殺するような格好になります。小売売上が0.6パーセント上伸して、物価が多少、伸びていますが、期待通りに賃金が伸びない可能性のほうが個人的には高いと思っています。
つまり4-6の終わったことは好調で一向に構わないのですが、7-9はこれほど良いとは考えていません。現時点では。つまり4-6月期は誰がみてもアメリカ経済は好調とみることができましたが、7-9月期は好調なのか不調なのかよくわからない、というのが本音のところになります。
ただ、8月は年末に続く二番目の消費月になりますので9月はその反動がでることになります。ですから現時点であまり気にしなくてよい、という考え方もできます。今夜、発表の「GDP」は最初、数字通りに反応をするでしょうが、その後はどうなるかわからない。
逆に日本の確定値は、おそらく1次発表は良すぎたので若干、下方修正と考えるとどうなるか、ということです。結論からいえばよくわからない、ということになります。
ADPは民間雇用者数になりますので、どうでもよろしい、良くても悪くてもどうでもいいという話で良くて当たり前、悪ければ雇用者数は頭打ちになったのか、というくらいの判断です。
テクニカル的にいえば、底練りは終了の可能性も否定はできませんが、来週まで時間を待ったほうが「息の長い円安」になると思います。
(この記事を書いた人:角野 實)