ドルが20パーセントから25パーセント切りあがると仮定した場合、ドル円は現在110円なのですから、132円~137円になります。ユーロも現在、1.16ですから、どこまで下がるのか、ということになります。
今回は、私の仮説になりますが、貿易摩擦の、おそらく帰結というのを考えていきたいと思います。
貿易摩擦の本当のところ
何度か触れましたが、トランプさんの暴走というのは、今年の年初に、リーク先は不明になるのですが、中国はこれ以上米国債を買わない、ということがブルームバーグによってリークされたことになります。
これを受けて、トランプさんやムニューシンさんは1月末から2月上旬にかけてドル高転換政策を表明し、実際に4月から、私の予測通り、ドル高相場に移行をしています。
まず、年初からドル安になったのは、アメリカの財政が減税政策によって、アメリカ国債増発により金利上昇、これで金利が伸びないと言われていたのが解消をしました。当然、アメリカの財政赤字が上昇したのですから、ドルの信認が薄れドル安傾向になることは過去のデータからも確かになります。
4月からドル高に移行をしたのは、まず、金利の上昇が上げられます。要するに世界一裕福なアメリカ経済で、金利が上昇しなかったのは、ドル安が進行をしていたからになります。債券の投資家は、金利が上昇し、ドル安を相殺するような値動きになったら一斉にドル債券を買う行動に出ます。
大量に債券を購入すれば、金利は引き下がりますが、一度、ドルのモメンタムが上昇してしまえば、そのトレンドはなかなか変化をしません。
つまり、ドル債券投資家は今までは金利が上昇しなく、ドル安が進行をしていたために、ドル債券を買わなかったのです。ところが4月以降は、ドルが上昇したので、債券に積極的に投資をしたといえるでしょう。
このことは以前、何度も触れましたが、外国人投資家というのはその投資する国の通貨が安くなる傾向があるときには投資をしませんが、その国の通貨が上昇し始めると一斉に投資をします。要は、通貨安の国に投資などはしない、ということです。
その点、そもそも世界一豊かな国のアメリカドルが安くなっていることが放置されたことがおかしいのです。上昇トレンドが確認されれば、投資家は一斉に株や債券を買ってくれるのは当然の話になります。
中国からすれば、年初に米国債を売却する、と脅したのは相次ぐトランプさんによるドル安政策だと思います。どんどんドルが安くなるようであれば、ドル債券を持っていても妙味がない、ということです。
アメリカとしては巨額の財政赤字がすぐには解消する訳もなく、中国にはドル債券を保有していてほしいという思惑があるでしょう。
その副産物
減税政策によって、アメリカの財政赤字は減る見込みはなく、しかも、ドル高になれば、外国製品は、アメリカ国内に大量に入ってくることになります。
その筆頭が中国であり、中国製品がアメリカ国内に大量に入ってくれば貿易赤字は今、以上に膨らみます。要するに、日本や中国、EUに対して関税を引き上げると主張するのは、その貿易赤字を拡大を防ぐことを目的としていると考えられます。
つまり経常収支というのは、貿易赤字+財政赤字で計算されるのですから、財政赤字は解消できないけど、貿易赤字はディールによって解決できる見込みがあるのです。
しかし、今後、有望な車産業で、北米は中国に次いで、二番目の市場が関税を20-25パーセント課税すれば自動車産業が衰退をします。これは、アメリカだけの話ではなく、世界的に衰退します。そのようなことをやれば、トランプさん自身が一番苦しむことは承知しており、おそらく報復関税20-25パーセントかけるということは、すなわち、ドルをこれから1年間かけて20-25パーセント上昇させれれば、関税分は差っ引きで値下げ圧力になります。
今のレートでは自動車産業はアメリカでの競争力を失いますが、為替レートが20-25パーセント切り下げられれば、関税による値上げを帳消しにすることができます。
私はこのシナリオで、いま、貿易戦争をトランプさんは仕掛けていると思います。
この証明
たとえば、ハーレーダビットソンはユーロ圏に工場を移転させると発表すればトランプさんから猛攻撃をされました。アメリカ国内でバイクを作ったほうが良い、と。
☆ハーレーダビッドソンの考え
・アメリカ国内生産人件費、設備投資費、などのコスト増
・海外生産人権費、設備投資費、などのコスト減
☆トランプさんの考え
・アメリカ国内生産人材の国内登用、ドル高によるブランド化
・海外生産高関税による競争力減退
ハーレーダビッドソンとトランプさんの考えの乖離には上記のことが考えられます。トランプさんはこのコスト増を、さまざまな政策によってそのコスト増を減退させようとしているのです。
トランプさんの目的は国内で車やバイクを作れば文句はない、と公言をしており、この報復関税によって、アメリカ国内の産業を隆盛させることを狙っていることはおわかりになると思います。
要はこの1年くらいでドル高にする算段がアメリカにはありますので、我慢できないのであれば、海外で作る、車やバイクの製造メーカーはアメリカ国内に移転させることをねらっているのです。報復関税の目的は、海外生産メーカーを国内に移転させることになります。
ともかく貿易赤字から発生させる、経常収支のマイナスにはもう、我慢ならない、ということになるのです。しかし、いつまでも報復関税を続けることはできませんので、ドル高をすることによってその関税を帳消しにする作用を持たせるわけです。
報復関税の目的というのは、国内産業の隆盛が目的、と考えるべきです。
証明②
・法人税減税
この週末に、10月くらいまでに法人税を減税する、ということを発表しました。要は、国内に工場や産業をもってくることで、減税分以上の税収の増収を目論んでいるのです。財政赤字の解消を狙っているのです
証明③
・原油増産をサウジに依頼
現在のドル高環境下において原油価格は高すぎる、これは誰でも思うことです。ドル高の上に原油高になれば物価が下がり、消費不況になる可能性が高い。
本来、ドル高ですと原油価格の国内価格は下がることになり、そのぶん可処分所得が増えます。しかし、現況では、消費不況に陥る可能性があります。
まとめ
以上のことから、うまく表現はできないのですが、今回の貿易戦争によって、その報復関税のパーセンテージが、そのままドルの切りあがりの可能性になる方が高いと思います。
なぜなら、そんな一方的な要求は世界の誰もが認めません。ユーロも中国も日本も飲まざるを得ないと思います。その理由は一方的な要求であれば、経済界はアメリカを見限るでしょう。
裏合意として、アメリカドルの切り上げを約束するのならば、現状のアンフェアな貿易慣行から各国とも飲まざるを得ません。
でも、関税をかけたとしても、ドルの上昇がそれを帳消しにする、とアメリカが約束をすれば、すべての国がこの報復関税を、積極的には受け入れないでしょうが、受け入れざるを得ないと思います。
(この記事を書いた人:角野 實)