そもそもG20とは何?
G20とは、世界の主要国20か国による国際会議のことで、ここが一番、重要なところで、その参加国で世界の「GDP90パーセント、そして世界貿易の80パーセントを占有する」ことになります。
つまり国連が全世界の加盟国のほとんどが参加をするのに対して、G20は経済の主要国のほとんどが参加をする会議なんだ、という認識をしておく必要があるでしょう。
世界のGDP、90パーセントを占有するということは、この会議で決定されたことは「全世界の経済動向を支配する」ということになります。それに対して国連は紛争やその仲介という業務に携わっていると考えるということもできます。
もっと、端的にいえば、G20は経済活性化の会議、国連は紛争や各種問題の解決の場ということになります。このように考えていくと、G20は経済、つまりどのようにして「世界経済を成長させていくかの会議」になるのです。
G20の歴史と前身
このG20は1999年から第一回開催が行われています。そもそも、突然この20か国が集まっていきなり会議を開こうということではなく、その前身があります。
その名前は「BRICS会議」といい、このBRICSは元ゴールドマンサックスアセットマネジメントの会長、ジム・オニールによって命名をされた新興国の名称になります。BRICSとはブラジル、ロシア、インド、中国のそれぞれの頭文字をとった名称になります。
このSについては、南アフリカと定義する方が非常に多いのですが、命名者であるジム・オニールは、当初、南アフリカをBRICSに含めることには懐疑的でした。
しかし、このBRICSの名称が一般的になるにつれて「南アフリカを含めてもよい」という考えに代わって行き、現在では南アフリカをBRICSに含めるのが一般的にあります。
このBRICS会議はアメリカの国力が、非常に弱ってきており、その結果、日本の1990年代のバブルやその後の中国の成長につながっていきました。つまり、世界経済に対するアメリカの国力が非常に衰退をしていたので、日本のバブルや中国の驚異的な成長は相対的に起こったものともいえます。
アメリカの国力が衰退をしているのに、G7などの国際会議では、アメリカの地位は揺るぎないものになっていることに疑義を感じたことから、このような会議が開催をされるようになり、1999年から正式にBRICS会議から「G20」と名称を変更して開催されるようになったのです。
実際に、この20年近くで最貧国とも揶揄されていた中国経済は飛躍的に発展し、現在では、アメリカ、ユーロに次ぐ、世界第三位の経済大国になっています。
つまり中国抜きでは世界経済を語れないような状況になっているから、このような会議が開催されたのは必然のことになります。
■過去10年間のG20開催地
・ 平成30年 6月:G20 ブエノスアイレス・サミット
・ 平成29年 7月:G20 ハンブルク・サミット
・ 平成28年 9月:G20 杭州サミット(
・ 平成27年11月:G20 アンタルヤ・サミット
・ 平成26年11月:G20 ブリスベン・サミット
・ 平成25年 9月:G20 サンクトペテルブルク・サミット
・ 平成24年 6月:G20 ロスカボス・サミット
・ 平成23年11月:G20 カンヌ・サミット
・ 平成22年11月:G20 ソウル・サミット
・ 平成22年 6月:G20 トロント・サミット
・ 平成21年 9月:G20 ピッツバーグ・サミット
アメリカは少子高齢化を解消
日本が少子高齢化と言われて久しいことになりますが、アメリカも1970年代から2000年前半までに、実は少子高齢化が進行をしていたのです。つまり、労働参加率が減り、そして人口の高齢化が進行をしたのです。
現在のアメリカは少子高齢化が解消をし、逆に、1964年からのベビーブーマー世代が退職し、逆にミレニアム世代と言われる、若い労働人口が増加する傾向にあります。
つまり人口の高齢化は進行をしていますが、それ以上に若い世代が労働人口に加わっているというような状態であり、それは労働人口の増加になります。
日本の少子高齢化は深刻
日本が、少子高齢化になるのは、第一次ベビーブーム世代が退職し、そしてアメリカのようにそれに代わる若い世代が、多く労働市場に参加をすると、少子高齢化は解消をするのですが、逆に2005年以降に日本の出生率は大幅に低下をし、2023年以降に深刻な労働力不足が懸念をされています。
現在、日本の全人口に対する労働参加率は60パーセント程度になりますが、2030年以降はこの労働参加率が50パーセント前後まで低下をすると言われています。
アメリカの成長は労働参加率で考える
アメリカは、2030年以降は全人口に対する労働参加率が現在63パーセント程度になりますが、これが2030年になると最大で75パーセントまで上昇をすると言われています。
この意味は1つの作業を1人でやるよりも、2人でやったほうが、早く終了するというのと同じことです。このような1人でやるよりも2人でやったほうが良いというのは、いまの流行りの言葉でいえば「生産性が高い、合理的だ」という言葉に象徴されると思います。
現在のアメリカ経済が将来に亘って強い、と言われるのはこの労働参加率の問題であって、そして、その労働参加率は今後も上昇していく可能性がほぼ間違いない、ということから強いと言われているのです。
一般的にいえば、人口動態による経済予測というのは、歴史上間違えることはない、というのがデータ上の結果であり、このデータからすれば、アメリカの衰退は今後、あまり考えなくてよい、ということになります。
このように、アメリカの衰退は、労働参加率の低下によって1970年後半から2000年代前半まで続いたのですが、現在では再び、現在の大統領トランプさんによってアメリカ・ファーストを実現しようとしているのです。
BRICSの源泉力は人口
このBRICSの命名者である元ゴールドマンサックスアセットマネジメントの会長ジム・オニールによると「その源泉は人口である」とその著書で、書いています。つまり、経済の成長をみるときにはその国の人口の増加をみれば、その結果はかんたんに予測できると言っています。
つまり、今後、人口が増える国は成長し、そして減る国は成長が減速をすると言っています。人口のほかに教育や携帯電話の普及率、健康問題などを挙げていますが、一番、確かな理論は、人口であると論じています。
つまりBRICS各国、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカは1990年代ではその人口が爆発的に増えた地域になります。
参考までに中国は2010年前後から、人口減少国に転じ、ロシアは人口は増えていないのですが「健康に生きる」ことによってその寿命が延びていることからBRICSに加えられたのです。
たとえば、ロシアというとウォッカ好きな国民性として知られますが、その暴飲によってその寿命が短いことが1990年代に問題視をされたのですが、それが改善し、そして旧ソ連時代からの混乱がある程度収束をしたことから高成長国として認定をされています。
ですから、一概に人口の増減によって、高成長国と認定されるということもないのですが、やはり、健康で長生きできる国が高成長力を維持していることになります。
G20は経済会議である
冒頭のほうでも触れましたが、G20は世界のGDPの90パーセントを占有する経済会議になります。その中でも、人口の増加が著しい、新興国の経済力は、過去の中国や日本の人口増加によって成し遂げた経済成長は見逃せないものがあります。
その前までは、その大枠として、G7という国際会議があります。これは通称、サミットと言われるもので、その参加国はアメリカ、日本、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ、EUになります。
これらの参加国をみて、みなさん思われることは、現在のアメリカを除いて、みな、人口が減少する国になるということだと思います。
つまり人口が減るということは、経済の成長が見込めないという可能性が高くなりますので、それに反発する形でBRICS会議が開催をされたのです。
そのBRICS会議のメンバーは上記G7に加え、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、メキシコ、オーストラリア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン、韓国、インドネシアになります。
このほかにIMFや世界銀行、国際エネルギー機関などの国連の組織も参加をしており国連との連携も緊密になっています。つまり世界の成長を担う、メンバーがG20にそろっており、これが世界最大の経済会議になります。
国連は経済分野だけではなく、そのほかの人種や紛争問題も処理をしているということになります。ただし、参加国には多くの問題があり、たとえば、最近ではアルゼンチンがIMF管理下入りをして、実質上のデフォルト、イタリアも政局が不安定で、財政懸念が叫ばれています。
ただ、過去に韓国もIMF管理下入りをしており、そういった面では、問題はないのであろうと思います。
G7との関係性@G20とG7どっちが格上なのか?
G20が世界のGDP90パーセントを占有しているのに対して、G7のメンバーで「世界のGDPの60パーセント」を占有しています。こういった数字をみていくと、このG7の経済には高成長は見込めませんが、この占有率をみると、世界の経済の大枠を決定していることになります。
つまり、G7とG20の会議、どちらが格上なのかをみる場合、「圧倒的にG7の方が格上になります。」なぜなら、7か国で60パーセントの占有率と20か国で90パーセントの占有率を考えれば、効率的なのはG7になるからです。
なぜなら、G7であれば首脳は実際に人数が違いますが、少数になります。G20は数時が増えた分、船頭が多くなります。各地域や国によって都合の良い要望や要求は、その国、地域によって違うことが必然であり、その意見のとりまとめを行うことは、至難の業になります。
つまり船頭が少ないということは、その各国の意見のとりまとめを行いやすいということであり、G7での決定のほうが意見をとりまとめしやすいという利点があります。
つまり、このG7の会議日程とG20の会議日程は、必ず、G7が開催された後にG20が開催をされることになっています。要するにG7で大枠を決定し、その結果をG20で再び討議をするという形です。
ただ、G7でもその意見のとりまとめが難しいのに、G20ではそれ以上に難しくなりますので、ある意味、G7が格上の会議になることは合理的な会議と言えると思います。
G20の決定する主な内容とは
ここ最近の流れとして、G7、G20での声明文で発表される大枠の内容は「世界経済の持続的、安定的な発展」が1つ目のこととして挙げられます。
つまり、世界経済が安定的、持続的に成長することはどの参加国も望むことであり、その安定的、持続的に成長させるために詳細な内容が討議されることになります。
この安定、持続的な成長の方策については「為替相場」にも大きく関与するのできちんと把握をしておかなければいけません。そして、2つ目は「自由貿易の尊重」ということになります。
この貿易に関しては、人口が今後伸びないと見込める国も、見込める国も、その人口の増減というのはある程度予測ができるものになります。つまり国の成長というのは、ある程度見込むことができる、ということです。
しかし、貿易に関しては、たとえば、過去ではSONYのウォークマンや現在ではアップルのスマートフォンのように全世界で成長が見込めるような大ヒット商品ができた場合、それを輸出している国は大幅な利益を見込むことができます。
それは結果として、爆発的なその国の成長が見込めるということになります。結果として、そのアイフォンを輸入する国は貿易赤字に悩まされ「保護貿易に走る」可能性があります。
保護貿易とは輸入障壁などの関税処置を設けることになります。
つまり「世界貿易の不平等を解消する」事がG20を開催するこ目的であっても過言ではありません。
要するに、不寛容な貿易慣行の是正をする会議でもあります。なぜなら、自国の成長はある程度の人口の増減によって見込める数字になりますが、貿易は爆発的なヒット商品などがあるとボーナスでその国の成長を見込むことができることになるからです。
ですから、各国の首脳は自国から世界的な大ヒット商品が出ることを望みますし、また、その戦争に敗れた場合は、自国の黒字を他国に奪われないようにその保護をしがちになります。
それを解消するのはG20会議になるのです。この2つに関しての声明が必ず、盛り込まれることになります。私たち為替にかかわるものが重要なのは、言うまでもなく、貿易には必ず外為市場を使わなくてはならないものですから、貿易に関する合意事項は必ずチェックをするべきものになります。
アメリカにとっては不利な合意
先のアルゼンチンで行われたG20会合ではアメリカのトランプ大統領が、合意声明文にいったんサインをしたものの、その後に廃棄をするということが起こっています。
これは、アメリカの政策、アメリカ・ファーストに反するものであるから、という理由らしいですが、世界の自由貿易に対してトランプ大統領は反対を意味するものではありません。
むしろ、その前年までに行われた貿易に関する合意がアメリカにとって不利なものであることから声明文にサインを拒否しているのです。実際にIMFは「アメリカにとって今の貿易慣行は非常に不利なことである」と認めています。
つまり、世間の評価はトランプさんが我儘であるという評価ですが、実際の数字をみてみるとアメリカのとっては非常に不利なものです。
救いは、トランプさん自身やアメリカが自由貿易そのものに反対ではないということであり、アメリカにとって、不利な状況が改善すれば合意をするということを言っていることになります。アメリカは反対していますが、世界経済の成長にとって自由貿易はマストのアイテムになるのです。
2019年大阪G20会議の展望
2019年には大阪で日本初のG20会議が開催をされます。ここで日本が議長国になりますので、それなりの成果を上げたいのは安倍総理大臣になります。
しかし、今年の9月に自民党総裁選挙を控えており、その再任はまだ決まっている訳ではありません。しかし、安倍総理は世界の自由貿易に向けて、TPPを今年度成立させるつもりだったのですが、アメリカの離脱によって、アメリカ抜きのTPP成立に向けて奔走をしております。
そして日本とユーロ圏がEPA協定を結ぶことによって、世界の60パーセントを占める自由貿易圏を成立させています。つまり安倍総理は2019年のG20国際会合にて、自由貿易を促進する議長国としてイニシアチブを取ろうとしているといえると思います。
おそらく、今年度中には、今の貿易摩擦は解消する可能性が高いのですが、大阪までにそのTPPの成立があり得るかは非常に微妙なものとなっておりおます。