みなさんは、マーケットで買いポジションをもっていて恐怖を感じるときはありますか。マーケットというのは、現物買いで買っていれば、そのマーケットが暴落するかもしれないという危機感は誰にでもあるものです。
そもそも暴落はなぜ起こるのか?
マーケットで買っているとき、それが現物であれ、信用、先物であれ、常に私たちを苛む暴落するかもしれない恐怖。その暴落の危機を表す指標のことで有名なのが恐怖(VIX)指数というものがあります。
つまり、よくこの恐怖指数がメディアなどで取り上げられるのは、この恐怖は投資家共通の問題だからです。
誰だって、買っているものが下がれば気分はよくないけど、そのリスクが常にあるということは、認識しているので、日本語名で恐怖指数というのは大きく取沙汰されるのは当然のことになると思います。
この指数が大きく取り上げられる理由というのは、日本語のネーミング、つまり誰もが関心がある名称をつけたことと、そして暴落する、それはどのタイミングで、という関心が引き起こしたことだと思います。
では、なぜ、暴落するのか、という命題に対しての答えというのは非常に明快であり、それはマーケットがつけている値段が実際の経済と大きく乖離をしているから暴落をするのです。
ところが、1970年代から「ミルトン・フリードマン」から誕生したアメリカのシカゴ大学を学閥とするシカゴ学派が「効率的市場仮説」という題目が唱えられたのです。
この内容は、マーケットで着いた値段はすべての材料を織り込んでおり、その値段はすべて正しい、というのが効率的市場仮説になります。
つまり、ニュースやメディアで流される情報、企業からの情報、そのほか国際情勢などの情報を織り込んでいるのが株価であり、そして市場価格だ、というのが効率的市場仮説の要旨になります。
みなさんが、よくテクニカルアナリストやテクニカル分析が詳しい人から聞く、市場の値段というのは絶対である、未来の価格は予測できない、というのはこのシカゴ学派の効率的市場仮説から出てきた言葉になります。この市場価格というものが絶対という考え方は現在の世の中を支配しています。
たとえば、自民党の国会議員さんなどとお話しをしていると、株価が上昇しているんだから景気はいいじゃないですか? と平気で言います。みなさんはどう思いますか?
日本は景気が良いと思いますか? 彼ら国会議員は国政を預かる身でありながら、みなさんのお給料が下がり気味であることは関係がない、と主張をします。
なぜなら、効率的市場仮説ではマーケットの値段は絶対だからです。株価が高いうえに、ドル円レートは円安方向です。効率的市場仮説から言わせれば、マーケットの値段は絶対の訳ですから彼らの主張は正しい、ということになります。
こういう政治家が大挙している中で、私たちの生活などよくなるわけがないのです。そして、私はこの効率的市場仮説なんて、間違いだと思っています。
なぜなら、私たち投資家というのはマーケットがつけた間違いな値段に投資をし、それを適正な価格にすることによって世の中に貢献しているだけの話なのです。
たとえば、最近、大暴落を記録しているトルコなどは明らかに異常安の状態にファンダメンタルズから読み取れるのですが、市場心理はまだ安くなるというセンチメントです。
でも、私から言わせれば価格が間違っているのだから、買うのが当たり前なのですが、市場心理は安いだろう、と考えているように思えてなりません。
これを打破するためには、リーマンショックや東日本震災の後に相場が安値をつけたわけですが、その安値のときに買う人間なんてほとんどいません。
そのときの状況はまだ安い、というセンチメントであって、買うなんてとんでもない、ということになります。そのときに日経平均が8000円、そしてドル円は80円だったのが今、どうなったのかを考えれば、トルコの状況も一緒だと考えています。
市場価格が常に正しいと思っている人達
つまり、市場は適正な値段を間違える、という事実は証明されているのに、世の中は自民党の国会議員や証券会社、保険会社は、効率的市場仮説を下に政策や企業経営を進めているのです。
その政策や企業経営が間違った結果になるのは、いつかは当然のことになりますし、実際、自民党の国会議員さんの言っている景気が良い、と、いうのは我々の感覚から言えば、奇妙奇天烈なこととしか思えません。
しかし、この効率的市場仮説を否定しているのは、私だけではなく、たとえば、「ジョージ・ソロス」や「ウォーレン・バッフェット」など世界的に有名な投資家もこの効率的市場仮説を否定し、特にバッフェットなどはこの効率的市場仮説に対して論戦を挑み、それが間違っていることを証明しているのに、世の中は効率的市場仮説を下に経済活動を行っているのです。
つまり市場価格が常に正しいと思っている人たちは、株価が上昇しているということは、景気が良い、現状、景気が良ければ、さらに良くなるだろう、ということを前提に株を買うのです。
でも、人間は調子に乗りやすいもので、その価格が間違って上昇しすぎたり、下落しすぎていることを考慮に入れていないのです。つまり、マーケットの価格がすべて正しいのだから、高すぎるということはない、ということなのです。
買い過ぎた部分で、先物、信用、オプション取引で売りを入れれば、マーケットは実勢に戻るために、下がるのは必定です。
参考までにシカゴ学派の効率的市場仮説がここまでの地位を得たのは、「ミルトンフリードマン」が、みなさんの利用しているFXの変動為替相場制度を固定相場から変更することを圧倒的に支持したことが認められ、それ以降、シカゴ大学のシカゴ学派は金融業界で力を持つようになったからです。
こういう間違った理論が実際、社会で採用されていることがマーケットを難しくしている原因になります。
もっと言い換えれば、マーケットの値段はすべて正しい、そして未来を予測することは不可能という、テクニカル分析論者の言い分というのは、もともと間違った理論をもとに構築されているので、信じる必要なんか、ない、ということをわかっていない人が多すぎるというのも私の感想になります。
暴落の可能性があるときの保険、ヘッジ方法
みなさん買い持ちが多く、そしてその株や為替が下落するときに、その保険をもっていない人がほとんどだと思います。
もともと、先物取引や信用取引というのは、市場の流動性を確保するために採用されたものになりますが、今のヘッジファンドの戦法というのは市場を買い持ちにして、暴落に際して、先物や信用を駆使して自身の買いポジションを守るというバイ&セル方針というのを採用をしています。
つまり何かを買えば、何かを売るということを投資信託やファンドは、必ず取っています。たとえば株を買えば、債券を売る、などということです。
こういうように、買いポジを守るために常に何かを売るという戦法は古くはアメリカで1970年代に採用された方法になります。
ところが、この戦法、戦術を逆手にとった事件が起こったのです。これが1987年のブラックマンデーで、このときと同時期にアメリカの代表的株価指数のS&P指数に先物取引が採用されたときに起こりました。
このS&P先物が主犯格ではない、という説もありますが、当時、買われ過ぎたS&Pに対して大きな先物売りが出て、いったん株価が下がり始めると、一斉に先物に売り物が集中し、その結果、株価が暴落したというのがブラックマンデーになります。
このときにはすでに自動売買システムができており、株価がだいたい高値から5パーセント程度下がると自動ロスカットにするシステムや先物を新規売りするシステム、自動のソフトが普及していたことも原因の一つと言われています。
ここでこの事件を詳細に解説するのは、いまも、こういったリスクは顕在しているからです。今のファンドはパッシブ運用といって、ほぼAIやシステムによって運用されています。
この運用は、相場が予想外の展開にいかないということが前提条件であり、これが今後、相場が不安定な動きになってくるとアクティブ運用が主流になります。そうなると、この先物や信用売りの割合が高まり、ブラックマンデーのような事態になる可能性が非常に高くなるのです。
つまり状態は1987年の状態と2018年になった現在も、株価が下がったときに、一斉に信用、先物売りが顕在化する状態は変わっていない、ということです。つまり暴落はいつ起こってもおかしくない状態であるということです。
ブラックショールズ公式
みなさんは自動車保険や火災保険などの一般に販売されている保険に加入されたことはあると思います。たとえば、自動車保険などはわずか10万円ていどのお金で、万が一の際に、1億円以上の保証をしてくれるのですから、非常にコストパフォーマンスが良いので売れない訳がないのです。
この保険商品の保険価格というのは、タイトルのブラックショールズ公式が1990年代に開発されるまでは手計算で行っていたのです。このブラック博士とショールズ博士の数式によってオプションという保険料率の計算がコンピューターによって自動的に計算することができるようになったのです。
ブラック博士はノーベル賞受賞前に亡くなってしまいましたが、ノーベル財団はその受賞時に死亡している人は表彰の対象としないのを、ブラックショールズ公式として、ショールズ博士にノーベル経済学賞を授与したのです。
つまりコンピューターで保険というオプション取引というものが、公式化されたことによって保険商品が世の中にあふれた功績、そして、マーケットではオプション取引ができたことになります。
この功績を考えれば、亡くなられたブラック博士も受賞の対象となったのです。しかし、この公式には問題が多々あり、まず、このブラックショールズ公式がシカゴ学派の効率的市場仮説を前提条件に数式が組まれたことが一番大きい問題です。
その証拠にショールズ博士は受賞後にあの有名なLTCMの顧問として迎えられ、その結末は世界最悪の金融機関の破綻という当時としては最悪な結果として、みなさんに知られるようになったのです。
つまりオプション取引は、一般の自動車、火災、生命保険と同じように、保険商品として完成をみたわけですが、問題の多い取引という認識ができると思います。
その後の暴落のヘッジ手段
要するに、株価やそのほかの市場に対して、それまでは信用、先物取引しか保険つなぎ、ヘッジの手段しかなかったのですが、新たなヘッジ手段としてオプション取引が誕生したのです。
現在では買い持ちポジションとしての手段は公式には、先物、信用、オプション取引になっていますが、現在の金融自由化によってさまざまなヘッジ商品ができています。
FXでみなさんになじみのある、バイナリーオプションなどは、オプション取引の金融派生商品、デリバティブの一部です。そのほかCDSやCDOなどさまざまなオプション派生商品があります。
先物、信用のデリバティブで有名なのは、CFDです。現在ではさまざまな買いポジ、売りポジのヘッジの手段としては多岐多様な商品があるわけです。
恐怖指数について
恐怖指数、VIX指数というのは、オプション取引のデリバティブになります。つまりオプション取引の一種になります。オプションには主に、コール取引とプット取引があり、コールは相場が上昇してしまったときの保険、そしてプットは相場が下落してしまった保険になります。
つまり暴落時には、プットオプションの値段が上昇し、言い換えれば、下げてしまった場合の保険料率が上昇しますのでプットオプションの値段が上昇します。このプットオプションの全体の値段が上昇することと、恐怖、VIX指数が連動していることを目的に開発された金融商品になります。
つまりプットオプションの値段が上昇するということは市場参加者が暴落を警戒、ないしは下落を警戒していることとなり、そのプットオプションの値段が上昇すれば恐怖(VIX)指数が上昇をするのです。
つまりマーケット全体の値段が上昇しているのに、恐怖指数の値が上昇しているということは、上昇しているけど、マーケットが下がる兆候があるという意味で恐怖指数が注目されているのです。
暴落中に恐怖指数が上昇するのは当然の話であって、そのときに懸命に恐怖指数を報道している報道は恐怖指数の意味がわかっていない、ということになります。
恐怖指数というのは、マーケットが上昇をしているのに、一緒に恐怖指数が上昇していることに意味があり、下落しているときに恐怖指数が上昇するのは当然のことであって、暴落中に恐怖指数をチェックしても意味がないことになります。
なぜなら、暴落する最中に保険商品を買い求めるのは投資家の心理になるからです。ただ、このプットオプションの購入のし過ぎという意味では、これをウォッチする意味があると思います。
ただ、重要なことは、上記でも説明した通り、このブラックショールズ公式にも致命的な欠陥があり、現状に即していないオプション価格が提示されることが多々あるということです。
そういった意味では恐怖指数が常に正しい訳では、ない、といことがみなさんにもおわかりになると思います。ここではこの説明に入ると非常に難解になりますので、省略しますが、オプション価格やみなさんがお求めになる保険商品の値段は常に正しい訳ではない、ということを知ってほしいと思います。