読み込み中...
プロセスは異なるものの、両国はアジア制覇を目指し積極的に海外進出を図りました。
道半ばで中国征服を諦め、鎖国制度を徹底し平和の時代へと歩み始めた徳川時代の日本と異なり、イギリスは国境紛争や植民地化を推し進め大英帝国を構築していくことになります。
日本は国内生産の効率化と集約を図ることで、イギリスは三角貿易の海洋型自給圏を構築することで中国を中心とするアジア依存から脱却していったのです。
今回は、鎖国時代の徳川幕府末期から明治維新、経済的側面からは「金本位制の確立」までを見ていきたいと思います。
鎖国による「引きこもりの時代」が日本を豊かにした
200万人超の武士が腰に刀をぶら下げて闊歩していた江戸時代を「平和の時代」と認識するのは難しいのですが、少なくとも徳川が治めていた江戸時代の約230年間、日本は内乱や対外戦争を経験していません。この時代の間に日本は劇的に耕地が増え、人口が増加し、人々の生活水準も急速に向上していったのです。
人口に関して、江戸初期については正確な統計がないのですが、慶長年間の日本の人口は約1,000万人と推計されています。その後、元禄・享保年間になると3,000万人になります。
つまり江戸初期の100年ほどで人口が3倍になるという発展を見せているのです。同じように耕地面積も戦国初頭から元禄・享保の間に3倍近い増加があったと考えられています。他国との交渉を一切断ち、国内にこもった日本人は「豊かな時代」を謳歌していたと言うこともできるのです。
幕藩時代の官僚システムを受け継いだ明治政府
豊かな時代の背景にはしっかりした行政システムがありました。江戸幕府のトップである徳川氏の元、大老・老中を筆頭に巨大な官僚システムが構築されていたのです。
老中・大目付のラインで各地大名を統括し、江戸の町には現在の区長のような形で「町奉行」が存在しました。幕府全体の財政を司るのは「勘定奉行」。幕府直轄領の管理や年貢の徴収・管理も担っていました。 明治になると、突然ヨーロッパ型の内閣・官僚制度が持ち込まれたように考えがちですが、実際は幕府の官僚システムを受け継いで形作られていきました。
明治政府は薩摩や長州出身の官僚たちをリーダーに、旧幕府の大名・旗本などの官僚たちを管理・活用していく形をとったのです。このように近代の官僚システムのベースは江戸時代に構築されたものでした。
新貨幣制度の確立を急いだ明治政府
幕末から明治の日本にとって、最大の課題は「中央集権システム」を固めることでしたが、開国をしたことで逆に植民地化のリスクにさらされることにもなりました。
開国政策を進めることで、多くの国々と条約を結ぶのですが、同時に軍事力の増強を目指すことになったのです。「中央集権」と「富国強兵」が重要政策となったのですが、それらを推進するために急がれたのが新たな貨幣制度の設立です。
明治元年には大阪に造幣局が作られ、武器商人であったグラバーを通じて造幣機一式を購入しています。明治2年に、元（後に円）・銭・厘という貨幣単位が決まり、明治４年に金本位制を採用し純金1.5gが1円と規定されました。
同年、金貨と銀貨が発行されますが、多くは貿易に関連した支払いにあてられました。そのため、早い段階で多くの金が海外に流出する事態となり、金本位制が衰退、事実上の銀本位制に移り変わっていきました。
安定することのなかった日本の「金本位制」
日本が再度、金本位制の新たな貨幣法を成立させるのは明治30年のことです。
当時、すでに日本銀行券として紙幣が発行されていましたが、貨幣法によって金との兌換が保証されました。が、今度は第一次世界大戦の影響で金本位制から離脱することになります。
昭和５年に金本位制に戻りますが、世界恐慌により翌年には金の輸出も禁止され、銀行券の兌換も停止となってしまいます。昭和17年に日銀法で正式に管理通貨制度が採用されると、日本の金本位制は姿を消しました。
こうして見ると、日本の金本位制が安定して運用されたことはほとんどなく、実際に効力があった時期は10年にも満たないのです。
