昨年の4月か5月頃、浜田内閣府参与が「今のドル円相場の水準は105円くらいだろう」と発言をしてかなりの糾弾を浴びたような記憶があります。
私はこれまでの持論通り、当時のドル円の基準値が108円程度であったことからこの意見には大賛成でした。ところが、円安方向に張っている多くのトレーダーがこの意見に反対論を唱えたため以降、浜田内閣府参与の発言はほとんどマスコミに取り上げられることはありません。
一方で、当時の基準値が108円程度というのは当然、日米のGDP総額を除した数字が大体この程度ですから108円と言っていただけの話になります。
現在の基準値は?
今の基準値は、最新のものはまだ計算をしていませんが昨年の段階では実は「111.2円」です。
大抵の場合、マーケットは常に10%や最大で30%まで売り過ぎたり、買いすぎたりしますので、その誤差を直近のレンジで考えた場合、10%、現段階で売り過ぎているので、私は今の基準値は「111.2円」から10%売られたところつまり、「122.4円」だと言っていたのにすぎないのです。
先月、円高のピークは「116.6円」と言っていたのは簡単な理由で「122.4円」から5%買われたところだからです。
つまり、「116.6円」は割れてはいけない水準であってその水準を割れると一気に正常の基準値に戻る傾向にあるという考え方に移行しなければいけないのです。すなわち「111.2円」まで円高が進むということを考えなければいけない事になります。
しかし、最近のクオンツ、いわゆる「ウォルストリート」に進出した数学者や物理学者のヘッジ手段としての先物の新規売りの増大とプットオプションが高騰していることから、彼らのポジションのリスク管理の観点から売り増しや爆買いに繋がったので円安と判断しただけの話になります。
訳のわからないことばかり解説をして、もっとわかり易く説明しろ、という方も多いと思いますので、簡単にいうと、日本は「金融緩和」の拡大は現在も続けているから10%売られすぎの状態で一方、アメリカは2014年10月に緩和の拡大を停止していますからこの状態なのだということになります。
つまり10%のプレミアムというのは「金融緩和」の拡大という付与の賜物と考えています。ドルに対して円は常に10%程度売られすぎの状態で、世界でもその傾向は強いということになります。
ですから、私が常日頃主張するドルが高すぎるという根拠はこの理屈通りにマーケットが動いているからドルは高すぎるということになります。
なぜ、5%円高で済んだかといえば、この5%は金融緩和のプレミアムという風に考えると、本当の基準値111.2まで円高が進むということは「金融緩和」の効果がない、とマーケットに判断されているか、金融緩和を止めろというマーケットの催促相場になることになります。
だから、今回、マーケットに対して日銀は「金融緩和」をまだ続ける覚悟だよということを示す必要があったので何も現状と変わらない「マイナス金利」を導入したのです。この緩和は円安を続けるというメッセージではないということをお忘れなく。
日本のスーパーエリートの考え方
日本の伝統的な大蔵省、財務省の官僚や日本銀行の官僚というのはドル円相場というのは結局、購買力平価(PPP)に収斂すると考えています。
途中、マーケット等が金利差に着目することもありますが、そんなものはマーケットの間違いで結局は「購買力平価」に収斂するというのが日本のスーパーエリートのコンセンサスになります。
つまり、この考え方は「アベノミクス」の張本人である安倍さんも認識しているはずですし、ノーベル経済学賞をあさましく狙いにいっている浜田内閣府参与も当然知っているから、昨年の4.5月の発言につながるのです。
「購買力平価」というのはドル円相場であるなら、アメリカの物価と日本の物価を比較するものですが、より簡単に説明すると結局、日本の企業物価にその値段は収斂するという簡単な考え方になります。
注目の企業物価
日本銀行が発表する企業物価指数というのは、以下になります。
2014年年央にピークを迎えているのはわかると思いますし、他の物価指数は2014年前半にピークを迎えています。つまりこの物価動向をみて浜田さんは円高になるよ、と言い始めたのです。
簡単な話をします。日本の物価が下がっているということは、それを国際的にその値段を維持させたい場合は物価の値段が下がって、それをドル建てで値段が下がっていないように見せるためには円高にいくしかありません。
一方でアメリカは最近の傾向として企業物価は上昇傾向にあるのですからドル安にするしかありません。つまり、どこかで円高方向にいくということに他なりません。これは、日米の金融政策当局者が認識していることです。もちろん、安倍さん自身も認識しているのです。
「歴史的な円安局面はもうすでに終わっていることは確かなようですね。」円高方向にいくのを防ぐにはアメリカの物価上昇がすごいことになる他ありませんが、それほど上がるわけありませんよね、産業の根幹である原油が急落しているのですから。
デフレ脱却や景気回復からの税収増の財政再建など無理というのはおわかりいただけましたでしょうか?新しい政策を出さないと日本破綻に向け一直線ですね。
また、増税かとため息をつく角野です。一体こんな間違いを犯した政治家、官僚、有権者はどう責任を取るのでしょうか?また民主党のときみたいに全
員知らぬ顔ですか・・・。青色吐息です。
員知らぬ顔ですか・・・。青色吐息です。
(この記事を書いた人:角野 實)