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スキャルピングEAのカラクリ@損大利小にはわけがある

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まずEAとは主にMT4上で動く自動売買プログラムのことだ。
スキャルピングというのは”頭の皮を剥ぐ”と言う言葉から派生した用語で、薄く過利益を重ねていくという意味で使われている。
スキャルピングEAの作り方のひとつはこうなる。画像はUSD/CADの5分足チャートに下の指数平滑移動平均線(EMA) 4本を表示する。
・黄色 35 EMA ・緑 30 EMA ・赤 10 EMA ・橙 5 EMA
黄色と緑の二つの移動平均線で、トレンド方向を求める。画像の場合は黄色より緑が下にあるので下げトレンドと判断する。下げトレンドと判断した場合は売りポジションだけを取る。
そして赤の移動平均線線を橙の移動平均線線が上方向にクロスしたところで売る。
小さな戻りを狙うわけである。Aで売り、Bでイグジットして5Pips程度の利確をする。
そして、今度はCで売るわけだが、この後は分からない。黄色と緑の移動平均線が重なろうとしている。売りという根拠が消滅しようとしている。あとは運だ。

ストップロスとテイクプロフィットの確率

これは少し乱暴な考え方かも知れないが、ストップロスとテイクプロフィットの比率が1対1ならば、スプレッドを考えなければ、ストップロス(SL)に到達する確率とテイクプロフィット(TP)に到達する確率は1対1になる。少なくとも、大数の法則が機能するほどの回数を重ねれば1対1になる。

スキャルピングEAの作り方

スキャルピングEAの作り方のひとつはこうなる。

ここに「5PipsでTPとし、45PipsをSL」とするEAを作るとすると単純に考えると、50回の取引で90パーセントがTPに到達し、10パーセントがSLに終わるということになる。
もちろん実際にはスプレッドの負担があるので、SLの比率はこれよりも高くなる。
だから、このSLに到達する確率を下げるために、様々なフィルターをかけて、ポジションを取るシチュエーションを制限していくことになる。
例えば、乖離率が大きい場合を避け、移動平均線の種類を試行錯誤し、取引時間帯によるデータを抽出し、第一金曜日の21時30分雇用統計の前、5時間はポジションを取らないようにする。
さらに極秘のフィルターをいくつか設定し、最後に、移動平均線を一気に最適化すると、勝率95パーセント以上のものが出来上がる。「5Pips×95-45Pips×5=250Pips」が期待される収益だ。

スキャルピングEAを使う初心者の方を俯瞰する

こうしたEAを一から作り上げるためには一ヶ月くらいはかかるだろう。

その努力は並大抵のものではないことも分かる。ストップロスとテイクプロフィットの設定にも苦心するだろう。聖杯を作り上げようと真摯に作っている制作者がいることも理解する。
しかし、残念ながら、これは、過去のデータの最適値を出したものに過ぎない。確かに再現性は高いと思わないこともないが、損大利小のEAだから、使っている初心者の方は、崖っぷちを歩いている子羊のようなものだ。
こうしたEAを使っていると、当初数ヶ月間はいい成績を残すことがある。しかしながら、ある日ドローダウンする、さらに連続してドローダウンする。
不安になり、このスキャルピングEAを実蔡に使用して絶賛しているブログに行くと、こうだ。
「皆さん、昨日は激しい値動きでしたね。わたしは、欧州の政情の不安定さからEAを停めていましたので助かりました。皆さんも市場の動きには注意して下さいね〜」
これを読んだ初心者の方は唖然とするだろう。しかし、そんなものかと納得したりもする。
なにせ、購入したスキャルピングEAのバックテストデータは、ほぼ直線に近い完全な右肩上がりを示しているし、販売サイトでも上位にランキングされているものなのだから。
そして、数日経つと、制作者からバージョンアップのメールが届く。メールの案内に従って、バックテスト公開のページに飛んでみると、2度続いたドローダウンは消えている。
ややもすると初心者の方は「これで、今回のようなドローダウンはないのだろう」と思ってしまう。
「バージョンアップで対応してくれるなんて、なんてサポートが充分なEAなのだろう」とまで考えるかも知れない。しかし、それは違うのだ。このバージョンアップというのは、過去の値動きに合うように、EAの各種パラメーター(設定値)を書き換えたに過ぎないのだから。
その証拠に、作者は堂々と言っている。「今回の2度のドローダウンを狙い撃ちにしたバージョンアップです」と・・。このようにしてバージョンアップを繰り返して、どうにも具合が悪くなると、名前を変えた新製品の案内が届く・・。これは私の実体験だ。

勝率が高く取引回数の多いEAを求める市場

市場では、とにかく勝率の高いEAが人気を博す傾向がある。このことが、こうしたスキャルピングEAの売り上げを伸ばしていく。

さらに、販売サイトはこうしたEAの販売促進に積極的になり、高勝率のスキャルピングEAは、常に売り上げ上位にランクされている状況が作り出されていく。加えて、ブローカーは取引回数の多いEAを歓迎する。取引の度にスプレッド分が利益になる可能性があるから当然だ。
そして、時には、「今、口座開設すると、49,800円相当のEAを差し上げます」となるわけだ。

EAはあなたが使う道具

かくいう私もスキャルピングEAを7本くらい持っている。いずれも昔購入してみたものだ。

1本、3万円~5万円はする。しかし、残念なことに、これらのEAを放置して勝ち続けたことはない。
今はハードディスクの肥やしになっている。しかし、こうしたEAもその特性を理解した上で使えば、稀に有効な道具になることもある。総じて「EAというものはあなたが使う道具」だと思った方がいいと思う。
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