北朝鮮は、2016年5月に、36年ぶりの党大会を開催しました。長きにわたって開催されていなかったことや、世界各国のメディアが招かれたことから、世界的にも注目を集めました。
北朝鮮はここのところ、ミサイルの発射実験を繰り返すなどして、国際社会に対して挑発を重ねています。こうした一連の北朝鮮の動きが為替にどう影響するのかを考えていきましょう。
北朝鮮が党大会を開いた意図
まずは、北朝鮮が今回の党大会を開いた意図について考えます。北朝鮮は、金正恩体制になってから、積極的に統治力の高さをアピールする取り組みを行っています。
これは、まだ若い指導者である金正恩氏の権力を国民に示し、国内の不安定要素を極力減らすためと考えられます。具体的な行動としては、核・ミサイル開発が挙げられます。軍事強国として国際社会で認められることができれば、より一層自国の主張をしやすくなると北朝鮮は考えています。
そのため、ミサイル実験を積極的に行い、技術の向上を国内外にアピールしてきたのです。特に党大会直前の時期には、毎週のようにミサイル発射実験を行っていました。
これに加えて36年ぶりの党大会開催によって、金正恩氏の権威をさらに盤石なものにすることを北朝鮮指導部はもくろんでいたといえます。
実際、党大会では金正恩氏が党委員長に就任することが決定しました。とはいえ、各国メディアが党大会の様子を直接取材することが認められなかったほか、英BBCの記者が国外退去処分を受けるなど、報道に関する神経質な姿勢がみられました。
国内で金正恩氏の権威は高めたいものの、統治力が不十分であることを国際社会に暴露されたくはない、という思惑が見えます。
核・ミサイル開発の状況
北朝鮮は、核・ミサイル開発を進めています。最近のミサイル発射実験から判断するに、技術力が向上していることは否定できません。
とはいえ、まだまだ日本やアメリカなどといった技術大国と比べると、北朝鮮が持つ技術はそれほど高いとは言えません。さらに、いくら核開発を進めたところで、実際に核ミサイルを発射する可能性は低いといえます。国際社会から非常に強い非難を浴び、国の体制が崩壊することが予想されるからです。
ただ、北朝鮮は自身の戦略に行き詰まりを感じれば、やぶれかぶれの行動をとる可能性があります。今後も北朝鮮の核・ミサイル開発の動きには要注目です。
東アジア情勢はどうなる?
北朝鮮が国際社会において孤立を深める中で、東アジア情勢が不安定化する可能性もあります。
対北朝鮮戦略でも、日本や韓国と中国の間で、やや姿勢に隔たりがみられます。東シナ海や南シナ海への進出を目指している中国が、北朝鮮に対して弱腰の姿勢をとれば、東アジア情勢が一層不安定化することとなります。
このように、地域の情勢が不安定となれば、経済にも悪影響が出かねません。特に、今や貿易大国といえる中国と周辺諸国の関係が悪化すれば、東アジア経済全体に悪影響が出てしまいます。
こうなると、国力が落ちることで通貨安になる可能性があります。日本を例にとると、円安は輸出企業の業績を後押しするメリットがあります。
一方、通貨安に歯止めがかからなくなれば、国外企業の買収が難しくなるなどのデメリットが顕在化します。日本円が大暴落するほど東アジア情勢が不安定化する可能性は低いです。それでも、北朝鮮リスクがあることを念頭に置いておきましょう。
突発的な行動に注意
北朝鮮が国際社会に対して挑発行為を行うことは、日本をはじめ多くの国が理解しています。為替や株式市場も当然ながら、北朝鮮の行動を織り込んでいるといえます。
とはいえ、北朝鮮が国際社会の予想を大きく超える突発的な行動をとる可能性は否定できません。ニュース速報などで北朝鮮情勢の急変が報じられた際には、すぐに詳細をチェックするようにしましょう。