ブラジルレアルは、2015年初めごろから大幅な下落を見せました。2015年初には1レアル=45円程度であり、2015年5月でも1レアル=40円程度だったレアル相場は、2016年5月には1レアル=30円程度にまで下落しています。
円高傾向がみられるとはいえ、円が25%も高くなったわけではありません。円高に加えてレアル安が進んだといえます。ではなぜレアルは下落したのか、今後レアルはどうなるのかを見てみましょう。
レアル下落の背景とは?
レアル下落の背景には、ブラジル経済の深刻な落ち込みが挙げられます。ブラジル経済は、鉄鉱石をはじめとする資源の輸出への依存度が高いです。資源価格は、中国経済の減速などによって大幅下落しました。
日本でも資源ビジネスを積極的に展開していた三井物産や三菱商事が大幅赤字を計上しています。こうした資源価格の下落によって、ブラジル経済は大打撃を受けました。
さらに、追い打ちをかけるように「ジカ熱」の発生や政治の混迷が続き、ブラジル経済の先行きは見通せない状況です。オリンピック開催を控えてはいるものの、経済は盛り上がるどころか、マイナス成長になっています。
このように、「新興国」で国の成長力が弱いとなれば、通貨は下がる傾向があります。景気浮揚策として利下げを行えばレアルの魅力が薄れるほか、そもそも通貨レアルに対する信用が失われるからです。
レアル建て資産への影響も
レアルの大幅下落は、日本でも多く販売されているレアル建て資産の価値に影響を与えています。
ブラジルレアルは高金利通貨の1つとして注目されていたため、レアル建ての債券が多数販売されてきました。
現在でもレアル下落に一定の歯止めがかかってきたこともあり、ブラジルレアル建ての債券を積極的に売り込んでいる証券会社があります。
レアル建ての資産を持っている投資家は、大きな損失を被ることとなりました。外債でいえば10%前後の利回りのものが多いですが、レアル下落によって利回りを加味してもマイナスのリターンになっているケースが多くみられます。
投資信託でも、レアル建てのものはレアル暴落によって価値が減少しています。こうした事情から、レアル建て資産に対する関心が薄れつつあります。日本ではレアル建て資産の販売が活発だっただけに、レアルの低迷が続けばレアル建て資産の魅力が低下します。
結果的にファンドを通じた資金流入が減れば、さらにブラジル経済の停滞が深刻化しかねません。
レアル相場回復の見通しは?
では、レアル相場は回復する見通しがあるのでしょうか。相場を見ていると、1レアル=30円程度で下げ止まっている印象を受けます。さすがにブラジルが財政破たんしたわけではないので、1レアル=30円を大きく下回ることはなさそうです。
しかし、逆にレアル価格が反発するかといえば、反発のきっかけは見当たりません。資源価格が徐々に回復しつつあるので、レアル相場も着実に回復に向かうとは言えます。
短期間での回復にはあまり期待が持てないので、レアル建て資産に投資する場合は、大幅な為替変動によるリターンは望み薄だといえます。
ブラジル経済の落ち込みは要注意
ブラジル経済の落ち込みは深刻です。工場設備が手入れされないなどの状況が増えてきています。
もし資源価格が回復しても、工場設備が稼働できる状況になっているかどうか、疑問が残ります。
今回のブラジル経済の落ち込みは、オリンピック開催に伴う特需があるはずなのにマイナス成長になっていることから、深刻だと考えられます。
幸いにしてアメリカの利上げペースが緩やかなのでクラッシュは免れていますが、新興国経済が不安定化する中、ブラジル経済の先行きは決して明るいとは言えません。
外債、FX、外貨預金など様々な投資において、レアルが絡んだ取引をする際には、ブラジル経済の不安要素をしっかりと考慮しておきましょう。