シカゴ連銀総裁のエバンス総裁は「FRB」での投票権をもつ連銀のメンバーになります。
このエバンス氏に関しての私の知見は極めてまともな見解を持つ方で、一部のアブノーマルの意見をもつメンバーよりはかなり知性を感じる方です。
エバンス氏が「来年末まで3度の利上げを行うべき」と発言したことがきっかけにマーケットが急伸をしました。
エバンス氏の論調
出典:ロイター
エバンス氏は、アメリカ経済は極めて順調で、特に失業率に関しては5パーセントを切っておりほぼ完全雇用状態にあるという認識です。
この辺りは私も散々、解説をしていますが、アメリカの労働環境は極めて順調なのですが、将来的にはこのIT革命によって雇用が順調に伸びるとは思わない、ということも言っております。
エバンス氏はこの辺りにも今回の公演にて言及をしており、雇用は現状では満足いく状態だが、将来には懸念があると言及をしています。
そして、最大のカギはインフレ率だということにあります。世界的な低インフレ率に懸念を表明して、またアメリカのインフレ率に関してもやはり目標がなかなか達成できないということになります。
しかし、今回、来年の末までに3回利上げを行うべきだ、と発言したことによって今後、一層ドル高と株高が進行するという期待感からマーケットが動いたことになると思います。
利上げを3回行うということは?
利上げを3回行うということはどういうことなのか、考えてみましょう。何度も解説しているように、「FRB」、すなわち「イエレン議長」の懸念というは、アメリカの労働市場とインフレ率、そして金利になります。
このうち、「イエレン議長」も現在の雇用情勢には非常に満足をしていますし、また最近の賃上げ傾向に関しても以前は不満であったのがかなり目標に近づいたことにあります。
ですから労働市場に問題があるということが、マーケットや専門家によって指摘されることがよくありますが、それは間違いです。アメリカ市場では雇用環境においては、現在、問題は存在しませんが、将来はどうなるかわからないということになります。
また金利に関しては、FFレートも懸念なのですが、一番の問題は長期国債の利回りに問題があります。これは今年の春先に散々解説をしましたが、10年債、30年債の利回りが低すぎます。ただ、最近は若干、そのイールドは改善されつつあります。
もっとも問題なのはインフレ率です。これは日本の問題でも触れましたが、為替に直結する問題です。エバンス氏がインフレ率に言及するのは、このためなのですが、インフレ率を目標に達するためには手っ取り早い方法として、通貨安にもっていくことがかんたんな方法です。
最近の不景気で、原油の需給は軟調なのは当然ですし、原油価格が上昇すればシェールの供給が増えるのでインフレ率は上昇しません。
それであれば、為替レートを望む水準に持っていくほかありませんよね。「イエレン議長」もドルが高すぎると去年から言及をしていますが、今回のエバンス氏の発言は実質、「ドルへの介入発言」と捉えても問題ありません。
最近のドル高傾向
最近のドル高傾向というのは好調のアメリカ経済を反映したものと考えるのが一般的な考えになると思いますが、また、ドル安誘導政策をもって行くと考えるべきです。
最近は「イエレン議長」も、ドルに関してのコメントはあまり行いませんが、最近のドル高はちょっとペースが早いと誰しもが認める傾向ですので、注意が必要です。
しかし、ユーロドルの下落ペースは明らかにユーロの悪材料待ちと経験上は思います。つまり、ユーロに悪い材料が出れば一気に売り進まれます、即ち、ドル高傾向が鮮明になることでしょう。このユーロの状態とドルの急伸の綱引きに今後はなるでしょう。
(この記事を書いた人:角野 實)