米大統領選でトランプ氏が勝利した直後、トランプ・ショックにより急速な円高が進みました。このまま円高・株安が続くかと思われましたが、円高は1日限りでした。株価も1日で急回復を見せましたね。
その後、円高になるどころか円安傾向が続いています。そこで、トランプ・ショック後の円安傾向について考えてみたいと思います。
現在の為替レートをチェック!
2016年11月18日時点での為替レートは1ドル=110円台まで円安が進んでいます。米利上げを控えていることもあり、円安・ドル高が進みやすい局面ではあります。
しかし、米大統領選の結果が出る前は、クリントン氏優勢の報道に対して円安が進んでいました。トランプ氏が勝利したにもかかわらず、円安が進んでいるのは不思議ですよね。
さらに、現在の円安は投機的な取引が主因とは言えません。為替レートが急変しているわけではないからです。ペースこそ早いものの、短時間で急変する相場ではないのです。そのため、多くのトレーダーの思惑が重なった結果、円安が進んでいると考えられます。
トランプ・ショック後に円安が進んでいる理由とは?
ではなぜ、トランプ・ショック後に円安・ドル高が進んでいるのでしょうか。最有力な理由としては、トランプ氏の経済政策への期待が挙げられます。実際、株式市場に目を向けると、「トランプ銘柄」などと呼ばれる銘柄が人気を集めているようです。
トランプ氏は富裕層を優遇する姿勢を示しています。そのため、富裕層からの投資がさらに進むなどして、株価が値上がりしていることが考えられます。
株価が値上がりしている市場は、リスクオンということができます。市場でリスクをとる動きが強まれば、相対的に安全とされる円を買う動きは弱まりますね。実際にアメリカや日本の株はトランプ氏勝利後に上昇していることも、さらに円安・ドル高に拍車をかけています。
トランプ大統領就任まで円安は続く?
大統領選に勝利したとはいえ、すぐにトランプ氏が大統領に就任するわけではありません。現職のオバマ大統領からの引き継ぎ時期は、来年1月となっています。果たしてトランプ大統領の誕生まで、円安傾向は続くのでしょうか。12月に「FRB」による利上げ判断があります。
ここで利上げが決断される可能性が高いため、大幅な円高・ドル安に相場が動く可能性は低いといえます。もっとも、利上げ確率は極めて高いと予測されています。したがって、利上げが実施されたとしても、材料出尽くし感から円安・ドル高はいったんストップするのではないでしょうか。
また、トランプ氏が実際にどのような政策を実行に移すのかにも疑問があります。大統領選勝利後からすでにトランプ氏は軌道修正を始めています。オバマケアの廃止を訴えたのに対し、修正を認める方針に転じていることなどが具体的内容です。
実際にメキシコとの国境に壁を築くとも考えづらいですよね。もしトランプ氏が富裕層を優遇する政策を放棄したり、大幅修正したりすれば、株式市場の期待は一気にしぼみます。来年1月までにトランプ氏が発言を修正しないか、注意しておきたいところです。
トランプ氏が現実路線をとるのかに注目
トランプ氏は大統領選挙の期間中、非現実的な政策を多数提案してきました。しかし、トランプ氏本人も、自身が訴えた政策の実現性が乏しいことは十分認識しているはずです。
したがって、今後、大統領として職務を行う中で、徐々に発言を修正すると考えられます。この際に、果たしてトランプ氏がどの程度まで現実路線をとるのかに注目する必要があります。
短期間で発言を180°ひっくり返すこともあるだけに、トランプ氏の発言は今後、相場の波乱要因となるかもしれませんね。せっかく日銀の黒田総裁がサプライズをしなくなってきたところで、新たなサプライズを起こす人物が現れた...という印象を持っています。