以前に、日本の景気と物価の整合性の話をさせていただきました。下記の表が日本の物価と株価のチャートになります。
物価と株価の整合性
以前にもお話をしましたが、その復習になります。企業物価というのは、企業が工場から出荷する値段のことを言います。他の国は卸売物価指数、PPIともいいます。
この企業物価は私たちが普段、買いモノをする小売店での値段を消費者物価指数といい、価格の前段階、企業が工場から出荷するときの値段は企業物価といいます。ですから企業物価は「消費者物価指数」の先行指数になるのです。
つまり、企業物価が現在のように下がり続ければ、「消費者物価指数」も下がるということになります。そして、私たちが基準値を算出するときに用いる「GDP」、国内総生産はこの値段のつくモノの総計を「GDP」、国内総生産というのです。
ですから、この物価が下がるということは、「GDP」総額が減ることを意味しているのですが、日本の「GDP」は先日、内閣府が発表した数字によると年率で今年は2.2パーセント成長になるそうです。こんな摩訶不思議な発表をする政府、日銀は頭がおかしいのではないか、と思うのです。
実際に欧米のファンドはこの全く整合性のない統計で何を基準に判断をしているのかがわかりませんが、おそらく物価を中心にマーケット戦略を考えているのではないか、と思います。
以前は、この物価傾向は、物価が上昇すれば株価も上がるということになるのですが、物価が下がっていっても株価が上がる、ドル円レートも円安になるというのは少し考えたらおかしいということは誰でも気づくのに、いまだに日本人の大多数は今後も円安傾向は続くという根拠のない相場観を持ち合わせているのです。
現在の相場は完全にバブル
一般的に経済学の定義では、経済実態に見合わないマーケットの上昇が続く状態をバブルというのですが、実際に2014年10月末日に行われた日本銀行の異次元緩和の追加によって株価は一気に上昇をしましたが、物価は全く上がっていません。
今年の年初も、アメリカが利上げをしたことによって新興国の景気が冷え込み、利上げということは経済をいったん冷ます効果がありますので世界的な株安で日経平均も落ち込みましたが、先般のトランプ勝利確定後に物価が下がり続けているのにも関わらず、日経平均は上がり、ドル円レートも円安方向にいくという、非常に奇妙奇天烈な動きになっているのです。これを「バブル」と言わずして何というのでしょうか?
不動産バブルやドットコムバブル
このバブルを経験した方にとってはこのバブルの破裂は末恐ろしいことという感覚はわかっていると思います。今日、我々の生活が非常に便利になって豊かさを享受しているのですが、おそらくバブル崩壊後は、心情的に太平洋戦争が終結したときの戦後日本のような気持ちになると思います。
今、政府、日銀が一緒になって物価、物価と叫ぶのには、この物価が上昇しないと本当の景気回復が来ないからになります。今は、トランプ勝利によって世界の景気が再び上昇しようとしているとき、そして最大の懸念のユーロ、特にドイツはこの時期になっても問題が露見をしないということは来年に持ち越しになるだろうということだと思います。
そして中国は人民元が実質「ドルペッグ制」になっていますので、ドル安であれば中国経済は好調でしょうが、いまのような短期間で急速なドル高を示現するとまた中国不安が巻き起こります。
そのほか、みなさんが気になっていることを書いておきますが、北朝鮮は大統領選挙の時に暴れるのはいつものことで、今のようにアメリカ大統領が8年置きに変わる状態では誰も8年前に北朝鮮が何をしたか覚えていないだけです。
8年前は北朝鮮と韓国が一時的に交戦状態になりましたよね。アメリカ大統領選挙の大統領が変わるときに必ず、北朝鮮は暴れます。4年後は今年ほど派手にはやらないでしょうが、8年後はもっと派手にやるでしょう。
フィリピンもアメリカに生意気な口を聞きましたが新大統領が確定してからはおとなしくなっています。要するに、アメリカは世界の警察を放棄したといっても警察だと世界はみな思っているだけの話です。バブルというのはその渦中にいると気づかないものです。
いまの日本のマーケットは実態経済を伴っておらずいつ崩壊してもおかしくない状態になります。君子危うきに近寄らず、つまり適当に利食いの回転を早くして、年末のアメリカの利上げが確定的なのですから世界経済は年初から冷えるはずですよね。バブル崩壊に今度こそなるのでしょうか?
(この記事を書いた人:角野 實)