今まで、原油相場の値段決定要因というのは、需給は関係なくはないということを散々、書いてきました。原油相場の価格決定の重要要因というのは、ドルの高さ、安さにあると書いていました。
現在、ドルはユーロに対して弱く、以前にも記しましたが、ドルが弱いといっても、特にユーロに対して弱い場合には、原油が高くなるとも書いていると思います。これは原油商いのほとんどがドイツ銀行が行っており、また産油国であるイギリスにはアメリカの代表的指標原油「WTI」が上場されていることからユーロが強くなるとつれて原油も高くなるのです。
一方でゴールドは、主に、日本円に対してのドルの強弱によって価格は決定するケースがほとんどで、現在、ドルは円に対しては強いのでドル建て金価格は弱含みになっています。このように商品市況ではドルの強弱によって、価格が決定することがほとんどになります。
では、なぜ、為替の決定要因にこのようなテーマを持ちだしたのかを書いてまいります。
為替の決定要因
為替の決定要因というのは、みなさんは「ビックマック指数」というのを聞いたことがあると思います。
日本とアメリカのビックマックの値段は違いますが、もちろん、通貨も違うこともありますが、日米で同じ品質で価格のビックマックは理論上、同じ価格にならなくてはいけない、ということが為替の決定要因になります。
つまり、アメリカでビックマックの価格が1ドルで、日本でビックマックが240円であれば、ドル円レートは240円にならなくてはいけないのです。これを国力で比較すれば、「GDP」の総額によってその国の格差によって、その経済格差を失くすようにするのが為替レートになります。
たとえば、アメリカの「GDP」総額が4円で、日本が1円の場合は1ドル4円という為替レートになるのです。つまり、「アメリカGDP総額÷日本GDP総額」を求めることによってその格差を求めることができるのです。
ドル円の場合はそこには複雑な計算がありますので、なかなか一般の方には今年のドル円が111.7円くらいになるというのは計算ができないと思います。
原油相場に需給はあまり関係ないが
「すべての価格決定要因は需給に勝るものはない」と株式相場の有名な格言がありますが、商品相場や為替相場には一物一価制度という、法則があります。
これは、最近の例では金の密輸に関して、あれだけ流行るのはなぜか、といえば、金の価格は日本でも、韓国でも、香港でも、同じだからです。
日本は売却した場合、消費税の差し戻しがありますので、8パーセント自動的に代金に上乗せされますので、密輸が後を絶たないのです。これは経済学の一物一価制度を悪用したものになりますが、なんでも、かんでも、将来は世界のどこの地域に行っても値段は同じになります。
どこかに安く売っているのであれば、そこで買って、高い地域でうれば自動的に儲かるのですから当然です。つまり、為替というのは上記の話を総合すると物価を一緒の形態にさせるために存在するものですから需給はあまり関係ない、ということになります。
通貨の需給
通貨の需給が注目されたのは、やはり「リーマンショック」後にアメリカ「FRB」が「QE」、つまり量的緩和を行ったときからになります。つまり、予想以上の通貨発行量を発行し、ドルを安く誘導しようという政策になります。
日本では「アベノミクス」、ユーロでは「ドラギ」が「金融緩和」を行うことによって通貨安を誘導したのです。今の状況を考えてください。アメリカは「金融緩和」を行っていますが、その量の拡大は行っていない、つまり「金融緩和」したときの発行量を維持しているということになります。
ユーロは緩和拡大策を見直そうとしている日本は週末の日本銀行の買いオペでもわかるように未だに緩和策をとり続けているといいことになります。
参考までに、アメリカの緩和量というのは日本円で600兆円くらいです。それを来年から40-50兆円、市場からドルを回収しようとしているのです。日本の緩和の総量はもうすでに600兆円くらいになります。
つまり通貨供給量は「日本>アメリカ」になっており、今のドル円相場が需給相場であるのであれば、円安に行くことも得心ができますが、日本の「GDP」が540兆円で正確な数字は調べていませんが、「GDP」に匹敵する緩和を行って、どうするつもりなんだろう、と思います。
アホじゃないか、と思うのが普通です。つまり、何が言いたいかといえば、今のドル円相場は「GDP」の相場ではなく、需給相場であれば円安進行には、得心がいくということです。そうしなければ説明がつかない動きになります。
(この記事を書いた人:角野 實)