一昨日、「イエレン議長」の議会証言にてようやくドル円相場が下落をしたという解説がほとんどを占めますが、今回はその説明をしてまいりましょう。
金利低下
実は一昨日の朝のコメントにも書いたように、「イエレン議長」が議会証言をする前からアメリカの債券市場は上昇し、その意味は債券価格が上昇することは、金利が低下をするということになります。
この債券の価格と金利のメカニズムがあまりわかっていない人が多いので覚えておくと良いと思います。すなわち、金利上昇というのは、債券価格の下落を意味します。では、金利が低下をするというのはどう意味なのか?を考えると、金利が低下をするというのは資金の需要がない、ということにならないのです。
その場合、金利が低下するのはケース1では、資金の需要がない、ケース2では、金利が高すぎて資金需要がない、ということになります。
現在のアメリカ経済は不景気ではなく、景気が良い中での、循環サイクルになりますので、今回の場合は明らかにケース1に相当をして、銀行は融資姿勢が積極的なのに、応じる借り手がいない状況ということになります。
この背景というのは雇用統計や各種指標で物価の上昇がない、ということが金利の上昇圧力がないのです。それが7/12の朝から低下してきたということは、説明がつかないのですが、金利の低下というのは、円高になるのです。
イエレン議長議会証言の内容
先ず、金利が低下をすれば、株価が上昇するという経済学というより、債券、株式、為替の循環メカニズムは大丈夫か、ということ説明してまいりたいと思います。
株、債券、為替の中である程度、ディフェンシブな投資商品は断トツで債券になるのです。
債券はこの3つの投資の中でもっともリスクが低い商品になりますので、金利が高いときには断トツの人気を誇る商品になります。ただ、その金利が低くなった場合には株式に投資資金はシフトします。
そして国内に投資すべき商品がない場合には為替を利用して海外の債券、株式投資を行うというのが基本のメカニズムになります。つまり、「イエレン議長」の発言を受けて、金利が低下したとして、その結果、ニューヨークダウが新値を更新したのは経済学の理論通りになります。
その上、ドル円は、円高なのですからドル安です。通貨安は株高を招きますのでまさに教科書の理論通りの動きになったのです。きのうの動きは文句のつけようのない動きになるのです。しかし、「イエレン議長」はかなり踏み込んだ発言をしているのです。
まず、アメリカの物価目標3パーセントは、数か月以内に達成するであろうと発言をしているのです。
もし、その達成ができなくてもいろいろな方策があるので、達成をするであろう、と言っているのです。これはきのうか、おととい、私が振れたように、今月の下旬に「イエレン議長」はジャクソンホールで講演を毎年の恒例通り行います。
この講演は、前任の「バーナンキ」は「QE」の停止、再開、開始などの重要発表を行う、「FRB」にとっては重要なアナウンスメントになります。「バーナンキ」時代はここで発表をして秋にはその政策を必ず実行をしています。
では、「イエレン議長」は、ジャクソンホールにて、きのう、テーパリングを開始しますよ、と発言をすると、議会証言をしたことに等しいのです。つまり、金融引き締めを行うと言ったのです。
金融引き締めとは具体的に、金利を引き上げることが一般的なことになるのですが、今回の場合は市場にばらまいたドルを回収するという、「テーパリング」になります。ドルを回収するというのはどういう意味なのかといえば、「リーマンショック」時に「金融緩和」を金利とドル需給において安く誘導するために、ドルの発行を大量にして、金利を引き下げたのです。
具体的にはアメリカ政府の借金を「FRB」が肩代わりをしたのですが、その「FRB」が保有しているアメリカ財務省証券、アメリカ国債を市場に放出するということを意味します。そうなれば金利は上昇しますから、「イエレン議長」が、数か月以内にインフレ率が低いのは解消するという意味がわかります。
つまり、きのうの議会証言は、秋には「テーパリング」を開始します、と言っていることに等しいことなのです。そういった意味では一昨日の議会証言は非常に重要なものとなるのです。
(この記事を書いた人:角野 實)