アメリカ雇用統計が金曜日のいつもの時間に発表されました。その数字は、非農業部門の新規就業者数は「-3.3万人」。久しぶりにマイナスという数字をみるな、と思いますが、実際、この数字はマーケットには関係はありませんでした。
今回の注目点
以前に、私は、この新規雇用者人数にはマーケットはあまり注目をしていないと記しましたが、今回、そう言っていたことを完全に剥落をしていました。実際は、数字なんてどうでも、いい、と思っていましたので、どこで円安いっぱいになるのか、ということだけを注目しておけばよかったのです。
その前に、数字の説明をしておきます。たとえば、失業率は先月4.4パーセントから、4.2に低下をしています。これはハリケーンの影響を受けて解雇されたひとたちが多いのに対して、失業保険申請者数は、スポットも平均値も大きく上昇したことで、そのことは証明されています。
つまり、ハリケーンによって職を失った人がたくさんいたことは事実になりますが、ただ、その後、新しい職に就けたということをこの数字からは読み取ることができます。
また、このマイナス3.3万人というのは従前予想がプラスの8万人だったのですから実質、10万人の新規雇用が喪失になったことになります。
これはこの10万人に「平均時給×8時間×365日」をかけあわせてそれによってプラスをする計算、そして、全就業者数から失業率の良化した0.2部分を掛け合わせると実質上、雇用者が減ったとしても、全体の「GDP」はプラスになりますので、ドルが強いと判断されることになります。
また、以前、雇用統計で重要なのは労働参加率や、平均時給になりますよ、ということでしたので、特に今回の平均時給の予想0.3が0.5、前年比で2.9という数字は、もう、年内に「FRB」の「物価上昇目標、2パーセントは楽々超えるな」ということを想起させるな、という内容でした。
つまり、年末の「FRB」の「利上げはほぼ確定的になった」ことになります。ついでにトランプの掲げる今年の成長が3パーセント目標も超えるな、ということが素人でも予見可能になってしまったのです。
この平均時給から、物価が上昇することを見込んで、債券価格が下落、金利が上昇し、債券価格の長期債とドル円はリンクしているので金利差拡大で円安にいっただけの話になります。
以前にも書いたように日米の金利差拡大はスポットでは大きな価格変動要因、つまり円安要因になりますが、長期的には円高要因になります。ですから、23時の消費者信頼残高の数字が予想よりもよくなかったことをきっかけに円高にいったのです。
そして、最後に記しておくのであれば、今回のマイナス3.3万人という数字にはおそらく、給料の遅配によって新規雇用にカウントされなかった数字があると思います。これは遅配がしっかりと支払うことが確認されれば来月、修正の数字として発表されますのでおそらく相当なプラスになると思います。
テクニカル的解説
きのう、私は、きのうの基準値は112.5-6で推移をしていると言いました。そして、ボラが増える可能性があるから注意をしたほうがいいよ、と記しました。
このボラがあがる背景は長期債の株の不動株に相当する「FRB」保有の長期債券が今月から減るのですから、先ず、長期債券の値動きが活発になる、ということを書きました。
それを受けて、ドル円のボラが復活するのですが、長期債10年物のボラはいつもより大きくなりましたが、それほどでもないことがドル円のボラの低さに影響をしたと思います。
結果、112.5-6の基準値からは0.5パーセント程度しかかい離をしませんでしたが、雇用統計発表の直前の安値112.85から見事に0.5パーセント離れたところで折り返しました。
今回の場合は113.1-113.6くらいまでの円安があるな、と発表直後に考えその辺で多くの指し値を出せば多くヒットしたはずです。そして引けは112.6と、また基準値に戻ってしまいました。
この基準値を下回らないと円高には行きませんが、直近のきのうの日足は上髭の陰線で、月曜日は日本が旗日になりますけど、陰線を引っ張ってくれれば、円高決定になるのでしょう。
陽線をひっぱると円安と、ま、ある程度、今週の分かりにくい展開よりもわかり易くなるような展望になるのでしょう。今回の雇用統計は市場の注目が平均時給に注目が集まったわかりにくい雇用統計になりました。新規雇用の数字は、無視をされて、平均時給で動いた感があります。
そして、金利差拡大でスポットで円安に反応し、そして長期的にみると拡大は円高ですから、円高に振れたというだけの話です。
今回の雇用統計の一番の注目は平均需給が0.2上ブレしたことによって、全米の新規雇用がマイナスであっても、そのマイナス要因以上に平均時給の上昇がアメリカのGDPを押し上げるという効果によって、円安になったのです。
わかり易く書くと「平均時給0.5>新規雇用-3.3万人」となり、平均時給が前月比0.5プラスのほうがGDPのトータルでの押し上げ効果が大きかっただけの話になります。
(この記事を書いた人:角野 實)