よく経済誌などで「今後、ドル安になる」と訴える専門家がいるのだが、正直、この人たちはアホではないか、と思う。アメリカの経済成長は、1960年代を彷彿とさせる勢いで上昇する可能性があるのに、何を言っているのか、と思う。
きのう「G20」会合の記者会見で「今後は新興国からの資金流出が問題になる」と言ったのはドル高が背景になります。
つまり、日本人に人気なオセアニア、FXで人気のトルコ、ブラジルなどはダメと言ったのに等しいことなのに、なぜ、ドル安と訳のわからないことを言うのか不思議に思います。
アメリカ経済については、これまで何度もコラムで書いていますので、読者の方もなんとなくわかっていると思いますが、要点をまとめたいと思います。
◆長期的ポイント
ミレニアム世代に代表されるように2000年初頭まで続いた、人口の少子高齢化は「リーマンショック」以降から徐々に解消されています。
つまり、今まで人口形成が逆ピラミッド型だったのがリーマン以降、ピラミッド型になったのです。
これによって人口に占める、若年層の割合が増え、この若年層をミレニアム世代とは一般的に言いますが、この人たちは生活のために働きます。
日本の若年層が減るということは働く人が減るということになり、引いては「GDP」を押し下げることになるから、少子高齢化が進行は危機ということになるのです。
アメリカの若年層は2030年まで、現在のところ増えると言われ、GDP2位、3位の中国、日本の若年層が減ることと比較しても「アメリカの成長は盤石」ということになります。
その理由にはトランプからの信任が厚いことになります。しかし、イエレン議長はトランプの推進しようとする[金融規制改革法案]には反対の立場を表明しており、そこがアキレス拳になります。
そして、ムニューニン財務長官はイエレン議長には否定的ということも、イエレン退陣の論陣が拡張されています。ただ、何れにせよ、このイエレン議長が就任直後にとった、ドル安政策によって経済が持ち直し、今年も4月からトランプ大統領がドル安政策を取り、それが、ほぼ成功をしていることが、重要なポイントです。
結果を残したイエレン議長、そしてトランプは各種の国際会議でもめ事を起こしますが、彼女はアメリカに有利な条件を喧嘩することなくまとめあげられる才能をトランプは買っていると思います。このアドバンテージは大きいと思います。
このドル安の継続は、「ファンダメンタルズ」からトランプ大統領もイエレン議長も無理だと判断していると考え、今後は緩やかなドル高路線に舵を切るものと思われます。つまり急激なドル高になれば、おそらく、トランプ大統領、ないしはムニューニン財務長官からドル高警戒発言が出ると思います。
就任直後のイエレンは、その発言を11月に行っているのでその近辺は要注意になります。国内、海外の報道ともに、トランプ嫌いばかりが先行してまともな報道を探すほうが大変です。
トランプは人種差別者ではなく、怠け者が嫌いなのです。怠け者に限って、権利を主張するから嫌いで、人種差別が起こるたびに彼が発する言葉に裏はないと思います。
それを嫌いな連中が、捻じ曲げて報道しているだけだと考えたほうが全てに整合性があります。そのトランプの政治運営はパーフェクトで、おそらく全て計算をしていると思います。
オバマケアが少し上手く行っていないように感じますが、そのほかはほとんど、やると言ったことを実行しています。つまり政権運営が不安定というのは現時点であり得ません。たとえば、国務長官の解任騒動など、あり得るわけがないのに嫌いな連中が拡大報道しています。
一方で「FRB」の懸念材料というのは、景気の回復が順調なのに、「物価が上昇しない」ことになります。この物価というのは政策金利のことではなく、市場金利のことになります。
ただ、再三に亘って書くように、ドル安の効果が出始めるのは消費者物価では10月、今月からになります。きのう、10/13に発表されたものは9月の消費者物価になります。
予想より低いということでドル安になりましたが、来月も予想より低いということはあまり考えなくていいでしょう。つまり物価目標は、今月の消費者物価2.2で達成と考えたほうがいいと思います。
そして、「FRB」の最後の懸念というのは、利上げが遅すぎて景気に水を差してしまうことになります。
これらの数字をみるとほぼ、「12月の利上げは確定路線」になります。ただ、市場金利は、きのうの市場金利が消費者物価や小売売上が予想より少ない、ということで金利が低下をしましたが、きのう発表の数字はそれほど悪いと言う数字でもなく、前期待が大きすぎたことの反動です。
◆直近のポイント
10/13、きのうの発表が、予想より低いのは、上記にも記しましたが、だいたい、通貨安の影響は消費者物価には半年後に影響が出始めるということ。4月からですから11月発表の数字から大きく上昇し始めないといけない、ということになります。
来月の消費者物価はかなり大きい数字ではないと、アメリカ経済に対する失望感が広がります。来週は中国の7-9月期のGDP速報値、そして月末にはアメリカGDP速報値になります。
これもポイントになります。中国は人民元高の影響を受けてどうなるか、アメリカはハリケーン被害でどうなるか、ということです。
◆未来のポイント
もし、万が一、アメリカの消費者物価が上昇しないようであれば、これはアメリカの「個人債務の問題」になります。昨今の論文では、個人債務の大きさが経済不況を引き起こすことが一般的になってきています。
経済は好調だけど
も、個人の債務が大きすぎるオーストラリアなどが最近、軟調なのはその代表例になります。つまり、ドル安効果でアメリカ国内物価は本来、上昇するはずなのですが、上昇しないとなった場合には、これは個人債務比率に所以するものになります。
も、個人の債務が大きすぎるオーストラリアなどが最近、軟調なのはその代表例になります。つまり、ドル安効果でアメリカ国内物価は本来、上昇するはずなのですが、上昇しないとなった場合には、これは個人債務比率に所以するものになります。
アメリカの個人債務比率は、「リーマンショック」前を優に超えている水準で推移をしており、この債務の比率を減らすことがトランプ大統領の来年のテーマになるでしょう。
つまりアメリカの自動車ローンの残高などは絶望的な水準にあり、日本の自動車メーカーがアメリカでの減益を予想するのは、こういう理由なのです。
アメリカで車が今後、数年は売れないだろうということになるのです。その間隙をついて、ユーロ、イギリス、中国が自動車のEV化を相次いで発表しているのです。日本もそれに巻き込まれる形になっています。メルケルとトランプの仲が悪いのはそのためです。
”アメリカファースト”を掲げるトランプにとって自動車は生命線の産業ですが、ドイツがそれを破壊しようとしている、というのがトランプの率直な感想でしょう。
おそらくドイツメーカーがアメリカ本土に自動車製造工場をたくさん作ればトランプはおそらく黙ります。トランプはあくまでも労働者目線で政策を進めており、日本の自民党のように企業目線ではやっていない、と感じることは多々あります。
つまり、トランプはアメリカの自動車メーカーが潰れても、労働者が働く場所さえあれば、文句を言わないとは思います。現にトヨタがそうしたら、歓迎するとのコメントを発しています。
ともかく世界の喫緊の課題は、貿易問題が進展しない以上、個人債務に焦点が変わってくるはずです。この個人債務の問題は、来年の主要テーマになると思います。
また、「IMF」はアメリカの政策見通しの不透明さをリスク要因としていますが、おそらくまだ波乱はあると思いますが、トランプの思惑通りに政策決定が議会を通じてなされることでしょう。
議会が言うことを聞かなければ、北朝鮮を攻撃して、トランプの支持率を上げ、中間選挙に勝ちたかったら、俺の言うことを聞け、と言って政策を通すことでしょう。
中間選挙にてトランプ支持者を徹底的に増やし、自身の政権基盤を盤石にするために、北朝鮮への攻撃は個人的にはマストとは考えています。
■まとめ
アメリカの一番の今の懸念というのは消費者物価から来る、「市場金利の上昇」です。これが上昇をしないということは、個人の債務がありすぎる、ということに現在の経済学会の情勢ではなるでしょう。
「FRB」の利上げとか、トランプの政策運営なんて、個人的には関係ない、と思っています。経済は誰が大統領をやっても成長します。なぜなら、アメリカの働く人が増えるのですから。
ただ、自由の保証されているアメリカで借金をするのも自由という保証は、今後はなくなると思います。これが、経済の足かせになるからです。今後、消費者物価、市場金利が上昇をしても、この個人債務や政府債務などは大きな世界のテーマになります。
ですから、日本でも借金をもっている人はその債務比率を減らせ、と言っているのです。借金があることは大きく行動の自由を奪い、それが日本や世界の成長阻害要因になります。
日本の無担保銀行ローンの残高があるなんて論外です。消費者金融も同じことになりますが。世界的に「借金があることは、悪いこと」という風潮になっているのです。そういう意味ではソフトバンクも相当危険な企業に分類されると思います。
(この記事を書いた人:角野 實)