日本では神戸製鋼の品質管理問題が話題になっていますが、経産省はのうのうと神戸製鋼問題の景況感を無視した景況感を発表しています。
何度もお話しをするように自動車産業というのは非常にすそ野の広い産業であり、GDPに対して3パーセントの占有率を誇っています。つまり車の販売が好調ということは、広い産業の好景気をもたらすことになります。この販売動向は、多くの産業に影響をします。
アメリカ新車販売台数
10月の乗用車自動車販売台数は、135万台で前月比マイナス1.3パーセント、通年は1422万台で前年同月比マイナス1.7パーセントになります。
メディアでは売れている、売れていると騒ぎますが、前月比も、前年同月比もマイナスの数字になります。
WSJより
この数字をみると、乗用車は去年より全く売れていませんが、ライトトラックが好調なのがよくわかります。このライトトラックとは、日本でいう、バンやSUVなどの人の輸送のほかに、物資の運搬に主に使われているものになります。つまり物資の移動が頻繁におきており、景気の好調さを裏付けるものになります。
またこのライトトラックは、政府の燃費基準が乗用車よりも緩く、すなわちその燃費が悪いということはガソリンの消費が落ちるということになります。
ともかく一番いいたいことは日本ではアメリカの自動車販売が好調といいますが、別に過去最高を記録したわけでもなく、それほどよくもない、ということです。
この問題点
自動車産業は国の根幹をなすといっても過言ではなく、その盛衰は国の浮沈をも握っています。
トヨタ自動車は今年の決算見通しを北米の自動車販売を不調として今年の決算の減益を見込んでいますが、10月までの販売は前年比+0.6パーセントになっており、この決算は遅かれ早かれ上方修正される可能性は高いと思います。
こういった自動車販売の好調さ、というのは、金利の低さに起因をしていると考えられますが、今後、12月に政策金利が引き上げられた後も好調が続くのか注目点になります。もっとも、従前のように、政策金利が上昇をしても、全くマーケット金利が上昇しない可能性もあります。
一方で、日本の問題は、言わずとしれた日産、神戸製鋼、スバルの問題であって、アメリカ同様、車産業は、国の根幹を為すといっても過言ではありません。
日産は二週間の出荷停止、神戸製鋼は被害金額の算出など、東芝の例からみてもおそらく企業内に隠ぺい体質があるので、まだまだ加算されることでしょう。スバルもリコール費用など減益要因が盛りだくさんになります。
こういう状態を受けて、日本では日銀が物価見通し達成時期の先送りを発表しましたし、第四次安倍内閣は補正予算への取り組みを発表しました。
みなさん、このニュースをしれっと、聞いていると思いますが、安倍政権は今後、景気が落ち込むとみているから補正予算を組むのです。つまり景気が内閣や日銀は落ち込むと見込んでいるのに、株価はそれを無視して続伸をしているのです。
こういうような状態をバブルというのです。つまり私が言うように安倍首相は日本経済のピークのときに衆議院解散総選挙を行ったのです。
FRB次期議長にJ・パウエル氏決定
このFRB議長人事に関しては、トランプ大統領は、イエレンの続投を希望したと思われますが、イエレンの親友をバカにしたことが決定打になったと思います。
おそらくイエレンが固辞をしたあとに親友の悪口をトランプが言ったのだと思います。どちらにしてもマーケットはイエレンの再任を希望していたと思います。
学説的にはイエレンがフィリップス曲線、パウエルは成長会計の方程式ということになります。フィリップス曲線というのは、雇用と金融緩和の関係を表した学説になります。つまり、バーナンキの後任としてイエレンが指名されたのは重要課題が雇用だったので、適材適所の人事になったのです。
今回のパウエルは金利に関しての専門家で学説的にはもう一人の候補、テイラーのテイラールールよりも上を言ったのがパウエルの成長会計の方程式と言われています。現在の金利問題は、非常にナイーブな問題ですので今回の人事も妥当なものになると思います。
本日のドル円
週末は雇用統計になりますが、過去数か月の雇用統計をみると、新規雇用者数にはフォーカスが当たっていないことが注意点です。ADPが予想以上によかったのに、マーケットが盛り上がらなかったのはそのためになります。つまり雇用統計は平均賃金に注目があつまっておりますが、先月2.9だったものが今月は2.7予想です。
今月の雇用統計はよくて当たり前、でも注目はそれではなく賃金だということです。まだ、世界の投資家には新規雇用数に注目をしている方が多いと思いますが、賃金です。
つまり、雇用者数がいいといって、ドルを買うのではなく賃金は下がるのですからドル売り、になるのです。本日の見通しはあまりにも外れるのでパスです。笑。
(この記事を書いた人:角野 實)