きのう発表された労働生産性の速報値は、3.0パーセントと前期1.5パーセントから上伸をしました。
今回はこの聞きなれない「労働生産性」ということについてお話をしていきます。そのほか、イギリスの利上げや本日の雇用統計などのことを少し。
非農業部門労働生産性
平均賃金というのは働いている人が受け取る給料というのはだれでもわかると思いますが、労働生産性というのは、平均賃金が労働者目線なのに対して、経営者目線になるものです。
すなわち、経営者からみると、一人当たりのコストが上昇すればするほど、収益を圧迫することになり、そしてそれ以上に企業は儲かっていないといけないことになるのです。
なぜなら、一人当たりのコストが上昇すれば、それ以上の利益を出していないと企業は儲からないからです。つまり、労働生産性が上昇しているということは「企業が儲かっている」ということになり、イコールとして景気が良いということになるのです。
Data Source: Haver Analytics
上記は労働生産性の推移で棒グラフは年率換算の労働生産性で、青い線が雇用者の給与総額になります。今月の数字を解説していくと、労働生産性は前期比で3.0パーセントになるのに対して、労働者の賃金は0.5パーセントしか増えていないということになります。
つまり雇用のコストは増えているのに、そのコスト増は現在の景況感が良いということから、賃金の上昇と考えるのが妥当になりますが、実際、賃金は0.5パーセントしか伸びていないことになります。
この差、2.5パーセントはどこに消えたのか?ということを考えるのがこの指標の難しいところになります。通常で考えられるのは「原材料コストの上昇」になります。たとえば原油価格は7-9月には42ドルから52ドルに上昇をしましたので約23パーセントの上昇です。
これが圧迫をしたと考えられます。平均値ではほぼ変わらずになりますので、コストは上昇していないとも考えられます。そのほか大規模な設備投資を行ったので一人当たりの生産性が伸びた、つまり合理化によって生産性があがったことが考えられます。
その辺はほかの指標も併せて考えなくてはいけませんが、単に言えることは賃金が上昇をしないで、生産性だけが上昇をしたのであれば企業は儲かっている、ということです。つまり株価の堅調はそれほど驚くことではない、ということになります。
雇用統計の説明
上記の説明をみて、新規雇用者数は劇的に増える、31.2万人予想になりますが、この数字というのは先月のハリケーン被害によって劇的に高くなるのは当然の話になります。
そのうえ、先月は賃金の遅延も発生しており、その遅延は新規雇用には含まれません。しかし、その遅延が解消した時点でその新規雇用はカウントをされますので、先月、先々月の数字も修正をされます。
ただ、人数がいくらであろうとも、平均賃金の予想は、先月の0.5から0.2に修正をされます。つまり賃金は先月と比べて伸びが悪いことになります。雇用統計は新規雇用者数から、この平均時給に焦点が変わってきており、この数字が減るということは円高になるとみるのが妥当です。
イギリス利上げについて
イギリスが「10年ぶりに利上げ」をしました。その結果を受けて、ポンドは暴落しています。アメリカがリーマンショック後に初めての利上げをしたときに書きましたが、「利上げというのは、景気を冷やす効果」がありますので、通貨は売りになるのです。
株も同様ですが、金利上昇になるのですから株人気から、債券人気にシフトをするのです。ただ、いったん、景気を冷やしても、それが不景気になるほどの利上げはしないのですから株も為替も時間の経過とともに、買いになるだけの話です。
この場合、通貨安ですから、株価が先に反応をして、その後、通貨が買われるというのがポイントになります。すでにFTSEは高騰しています。本日は「雇用統計」ですので、ドルの動向ははっきりしていますが、ドル円からくるポンド円の動きは少々わかりづらいものです。
(この記事を書いた人:角野 實)