最近は、相場用語が通じないことが多いと感じます。たとえば、押し目買い、戻り売り、この言葉が理解できない方が多い。かんたんにいえば、アップトレンドでの下げ道中を押し目と言い、アップトレンドは下がったところを買いなさい、という意味でもあります。
ダウントレンドは戻ったことを売りなさい、という意味があります。建玉という言葉もそうであろう。あなたが持っている買い持ちのことを買い玉といい、この玉とは信用や先物取引での買い持ち分、売り持ち分のことです。FXは先物取引なので、この玉と言い方でいいのです。
こういうような状況になったのは、おそらく、若い世代がこの信用、先物の世界に入ってきている証拠なのですが、これは連綿と続く相場の世界のしきたりなのです。
つまり、大損した人たちは退場し、そして新しい世代が入ってくる。だから、相場の世界というのは、長く生き残っている人たちは相場の値動きは時代が変わってもその値動きは変わらない、というのです。私も変わらないと思います。
ここ数日のドル円の動きというのは完全に内部要因に起因する動きであって、テクニカルとかファンダメンタルズなんて関係がありません。
要するにみんな買っている、戻る場面であるはずなのに、戻らない、だったら、売り浴びせをしてその買っている連中の証拠金を取り上げてやろう、という動き「だけ」なのです。
きのうなどはストップロス狩りの動きがドル円で収束したと思ったら、今度はユーロドルや金でその動きが始まる、結果、ドル安なので円高が進行するというような動きです。この動きを20年前の相場師に解説せよ、と言っても解説は誰もできなかったであろう、と思います。
なぜなら、いまほど、リアルタイムの値段が配信されていなかったからです。これだけ便利になっても、全く、こういうことは変わっていないな、と思います。
きのうからの動き
きのう、ようやくECB理事会が終わり、ドラギがユーロ高をけん制しました。こういう発言をするというのは、ECB副総裁が警戒発言をしたことから、間違いなく、ドラギも同じことを言うと予想できたことで、内心、私は早く言ってくれよ、と思っていました。
でも、わかりきっていることなのに、市場はそれに反応をしないのです。つまりドル安の転換、ということです。ムニューシン財務長官がドル安を認めるとか、盛んに報道されていますが、トランプ政権になってから、ずっと彼は同じことを言っていますので、なんであの発言がドル安容認になるのであろう、ということです。
アメリカは外国から投資をしてもらわないといけない国であって、海外の投資家がアメリカに継続的に投資するためにはドル高になる見込みがなければ、投資などしない訳です。
要するにアメリカ国内の株や債券でいくら儲かっていても、ドル安で大損する可能性があるので、将来、ドル高にするという約束がなければだれもアメリカに投資などしない、だから長期的にはドル高を支持する、というのです。
トランプがTPPに参加する、と言い始めたのは貿易でのアメリカのアンフェアな取引が解消されつつあるから、あの発言をする訳です。要するにムニューシンは貿易では短期的にドル安はアメリカに有利、と言っているのをトランプはTPPがアンフェアと言って離脱をしたのですから、そのアンフェアが解消しなければ復帰を検討しない訳です。
それを、復帰を検討するというのはアンフェアが解消したから、とみるべきでしょう。ゆえに、ドル安を推進していたアメリカが今後はドル高政策にもっていく可能性がある、ということになるのです。
つまりトランプのきのうのTPPに復帰を検討という発言はドル安政策の見直しと同じことというメッセージと取る必要があるのです。
特段、出席する必要のないダボス会議に出席をしたのは、このことを言うため、と考えるべきです。みなさんが考えている以上に政治の影響というのは、マーケットに大きな影響を与えるものです。
ですから、ドル円が足早に円安になっていき、金は下がり、ヨーロッパ時間になると、ユーロドルの下げが加速するでしょう。結果、さらに円安になると思うのです。やっと落ち着くところに落ち着いたというのが感想です。
(この記事を書いた人:角野 實)