結局、今回の下げの意味は、米朝会談のキャンセルとかそういうものではなく、イタリーの政局の不安定だったのであろう、と思います。
米朝会談のキャンセルやまた再開するということによって、みなさんはドル円相場が上下動していると考えていた人が過半なのですが、結局、このイタリーの情勢を横目にみながらマーケットが調整をしたのであろう、と思います。
つまり、きのう辺りから私はドル円の買い準備をしていたのですが、あえなく、買い玉はロスにかかるというような状態です。もちろん、米朝会談のゴタゴタによって、ドル円が下落したとは考えておらず、あくまで円高調整の一環であろう、と思っていたのです。
当初は、レンジ抜けの上限まで売られる、つまり107円台を視野に円高が進行するというシナリオを再び取り出さなければいけないな、とは思いますが、大したことがないだろ、とも思います。
イタリーの正常不安定は他国と意味が違う
イタリーの政情不安というのは、トルコ、イラン、アルゼンチン、ベネゼェラと全く意味が違うということをわかっていない人が多すぎます。考えてみてください。イタリーはサミット、G7の中の一国です。
つまり、世界の経済大国の中の一つになるのです。ただ、G7の中では最下位の経済規模になりますので、イタリーをG7のメンバーから外せという議論も巻き起こっているのも事実です。
ほかの問題児たちと比べ、経済規模が違いすぎますので、マーケットはその影響は深刻だと数字上とらえるのです。お仲間のギリシャと比べても大きいのですから、ギリシャであれだけの騒動になったのですからマーケットが警戒するのも当然の帰結になります。
イタリーが問題児の仲間入りをしても、その規模からいえば、まったく意味が違うのです。
イタリー経済
上記はイタリーの失業率とユーロの失業率になります。左がイタリーの失業率で、現在11パーセントになります。右がユーロ圏失業率で現在、3パーセントの前半になります。
100人の国民がいてイタリーでは11人失業しているけど、ユーロでは3人しか失業していないというと、この意味のすごさはおわかりになると思います。
上記のグラフは右端と左端の軸が違いますので、同じような失業率と感じる方も多いと思いますが、イタリーは全く、南欧債務危機から失業率が改善をしていないことがわかると思います。
この結果、ポピュリズムの政権が誕生し、ECBに対して債務の減額を求めるというような間抜けなことを言い始め、危機が勃発したということになります。
このポピュリズム政権の性質が悪いのは、要するに国民が選んだ政権だ、ということです。今の世界政治というのは国民が選んだ政権に正当性がある、という流れで、その政権を国際政治の世界では認める、というような形です。つまり、尊重をしなければいけない、ということです。
私自身が借金を背負っているのであれば、できるのなら、その借金を踏み倒したいという誘惑に駆られますが、そんなことをすれば自分自身の信用問題になりますので、口に出しません。
ところが今回の政権は口に出して、要求してしまった、どこの国に行っても、借りてお金を返さないのが悪いのは世界共通です。欧米では多少、貸し手責任は問われると思いますが。要は景気が悪いと、ポピュリズム政権ができやすい、ということです。
南欧債務危機後にフランス、ドイツ、イギリスなどの選挙が注目されたのは、ポピュリズム政権ができることをマーケットは警戒をしているのです。
つまり人間の欲望だけで動くような政権ができれば、まともな結末を迎えることができない、ということです。現在、マレーシアでもポピュリズム政権が誕生しています。この国も警戒すべきだ、ということは以前もお話しをした通りです。マレーシアも景気が悪いのです。
この結末
7月にも総選挙が行われる可能性が高い、という報道ですが、結末はわかりません。言えることはG7の中でイタリーはそもそも、その地位を保つことができないくらいの経済規模であり、問題児でもあるのです。
この失業率をみても明らかなことです。ただ、ギリシャやイギリスと違うのは世界の景気が好景気なことです。つまり強力なリーダーシップをもって、主導することができるとは、思います。
あまり自信はありませんが。イタリーが不景気でも、グローバル経済が好調であれば、そのおこぼれをイタリーは受けることができ、ギリシャのときはほかの国も青色吐息だったということも要因としてあります。
それより問題のこと
2000年初頭の段階では世界の南北問題格差が歴史上、もっとも詰まった世紀と言われておりました。その要因というのは、ドル安の結果です。
つまり、ドルに金利がつかなく、その上、ドルが安いということです。結果、アメリカに投資されていたお金がBRICSを筆頭に新興国に大量に資本が流れ込み、新興国が繁栄をしたのです。
しかし、アメリカの金利が正常化し、そしてドルが強くなっていけば、南北問題格差が再びクローズアップされることでしょう。となると、新興国で財務の弱い国は、再び存亡の危機になる国は続出してもおかしくはないと思います。ソロスはこのことを言っているのです。
アルゼンチンやトルコはその走りであり、こういうことが起これば、世界でテロや紛争が増えるのは当然の帰結です。イタリアは先進国みんなで助けるでしょうが、これらの新興国は先進国の財布の余裕具合次第です。
先進国の本音というのは、おそらくイタリーにはIMF管理にでもなってくれて、言うことを強制的に聞く、政権になってほしい、というのが本音でしょう。そんなことになればまた大混乱でしょうが、借金を踏み倒します、と宣言する国がどこにあるのでしょうか?あきれてモノが言えません。
(この記事を書いた人:角野 實)