ビルグロスというと知らない人も多いと思いますが、PIMCOといえば、債券のファンドということを知っている人も多いと思います。何かわからないけど、PIMCOは知っているという人は多いと思います。
このPIMCOの元共同経営者がビルグロスになります。参考までにPIMCOは規模では世界ナンバー1のファンドになります。そのビルグロスがアメリカ債券でイタリー問題にて3パーセントの損失を被ったということがマーケットで話題になっています。
彼のロジックは、おそらくこうなります。アメリカの1-3月期の国債発行量は減税政策によって、増えた。4-6月もさらに財務省は増やすと言っている。需給で考えれば、アメリカ債券は売りだ、だから思惑の片張りでショートを増やそうという発想になります。
そして、また世界の多くの投資家もこの考えに同調をしたと思います。だから、債券相場は軟調な展開になっていたのでしょう。しかし、需給環境に相場は左右される、という格言のように、需給がルーズなのに債券価格は下がらない。
この原因はイタリーの政局不安に起因するから、何れまた、下がると考えるのは妥当か?という問題に帰結をします。私からみればこの発想は間違いです。
相場は確かに「需給」で値段が決定します。上記の考え方は需給の「給」にしか着目をしていないから間違えたのです。発行量は確かに増えた、でも需給の「需」の部分はどうなのか、ということです。
年初の10年物金利は2.5パーセント近辺であり、直近は3.0パーセント近辺。いくら金利が上昇しているとはいえ、0.5パーセント程度しか上昇をしていません。経済でいう、0.5パーセントというのは結構大きい変動なのですが、この辺はまた機会があればお話しをします。
要するにレバレッジを利かせて投資をしている人にとってはなんだか物足りない数字に映るのは事実だと思います。ただ、この0.5パーセントの意味をよく知っている債券投資家にとってはとんでもない数字になるのです。
つまり、供給も増えたけど、需要も増えた、ということに現在はなっているのです。つまりビルグロスが考えたであろう、ロジックは需給に着目するのは正しい、でも需給の供給部分にしか目を当てていないから大きな損失を被ったと考えればいいのです。
このように一見、正しく見えるロジックでも、逆の結果が出るケースというのは、要するに、そのあなたの考えたロジックが間違っているから起こる帰結なのです。
人間は自分が一番正しい、と思いがちの動物なのですが、常に相場観を組み立てるときには一歩、下がって「本当に自分は正しいのか」と自分自身に問うことが大事なのです。
私の場合は、相場観を自分で組み立てても、どうせ間違えるんだから、と、多くの期待をしないようにしています。
それでも、今回の原油やドル円でも「思いあがった」発想をしていたのではないか、と自分自身では反省をしています。ともかく、ビルグロスのような世界的に有名な投資家であっても「思い込み」によって間違えるのですから、私たちのような弱小な投資家はもっと注意をしなければいけないと思います。
今、注目されているもの
最近、アメリカの経済指標に触れることが少なくなってきたと感じる読者さんも多いと思います。その理由は、アメリカや、そのほかの国の経済指標をよくみていても、経済の実態がよくわからない、というのが個人的な感想になるのです。
これは仲間内で話していても、同じことで、よく分析をしていても、アメリカが長い目でみればいいことはわかりきっているが、現状は、どうなのか、よくわからん、という意見が大勢を占めます。
だから触れないだけなのです。きのうGDPの発表がありましたが、予想以上に悪いよね、と思うのですが、この結果が雇用統計の平均賃金にストレートに影響するか、というのはパッとみた感じ、つまり、直観では影響しないだろうな、と思うのです。
この直観というものは厄介な代物なのですが、直観というのは、自分の経験などを加味して感じるものであって、間違いの直観というのにはバイアスがかかっているものです。
バイアスは間違っていてほしくない、などの感情になります。つまり直観が当たるときと当たらないときがあるのは、その考えが経験によるものか、バイアスがかかったものかの判断をしなければいけないのです。話が逸れましたが、今のマーケットは金利動向で動いています。
こういうことを書くと、イタリー国債の金利を勘違いする人は大勢いると思いますが、それは違います。やはり、世界の中心はアメリカであり、アメリカの金利が下がってくると、新興国の元気がついてくる、という構図です。金利の分野が得意な人は多くないと思いますが、アメリカの金利が上昇してきた以上、マーケットは金利で動く側面も出てくるのです。
投資家はどういう目線で金利をみるかといえば、その国がいかに安全で、金利が高いかによって、投資する国を変えるのです。現状は、一般的にはアメリカの金利に先高感があるので、アメリカに人気が集中する状態です。短期でみれば、アメリカの金利が下がっている状態ですから、今は、ドルに投資をする人が少ない状態です。
だから、少し円高気味だという解釈でよろしいのかな、と思います。ロジカルに考えれば間違いだらけのロジックでもある、ということをお忘れなく。
(この記事を書いた人:角野 實)