何度もお話しをしていますが、経済指標には先行、一致、遅行指数にカテゴリー別けをされます。
そのほかに政府、企業、家計というカテゴリー分けもされます。今回はこの観点に絞って解説をしていきたいと思います。私の、きのう買ったドル円だけが憤死し、ほかは全部、利が乗っている状態です。
何だこりゃ、というような状態です。たしかに、雇用発表の内容はドル安方向ですので、株、原油、金、新興国通貨は上昇するのが当然なのですが、雇用統計のときだけ、ドル安に反応するのがイマイチよくわかりません。
もちろん、ドル円以外、すべて売られていたので単なる買い戻しという解釈もできるのですが、想定していた世界と違うのには驚いています。
雇用統計の内容
以前から記しているように雇用の新規雇用などは注目する必要もなく、極端に低い数字が出た場合には留意する必要があります。
しかし、夏休みを控え、工場などは人員の確保に動くはずですので変な数字が出るわけもなく、いまだに新規雇用云々に注目している方をみると、なんとも言えない気分になります。
何度も言うように、今の雇用統計は、アメリカ経済が完全雇用状態に入っているのですから、リーマン直後の街中に失業者があふれていた時代と違います。ほとんどの新規雇用は転職需要になるのです。
つまり給料ゼロの人が、就職したのと、転職するのでは、ゼロの人が雇用されたほうが雇用効果、経済効果は大きいのです。その収入がゼロの人が完全雇用下ではいないことになりますので、注目は平均賃金になります。
これはフィラデルフィア連銀指数の解説をご紹介したものですが、企業の支払いと受け取り金額を見た場合、支払いの増加の方が大きく、受け取りの上昇が少ないのですから、従業員のお給料が上がるわけがありません。
つまり、この従業員の平均受給が年率でコンセンサス2.8だったのが変わらずの2.7というのは十分に事前に予想できたものです。
そのほか、失業率がコンセンサス3.8から4.0に上昇です。失業率が0.1ポイント上下するのでも大変なことなのに、夏前の需要期を前に0.2も上昇したのですから、悪いと判断せざるを得ません。
つまり雇用人数などは極端に少ない場合には着目する必要がありますが、今回のように平均並みの新規雇用であれば、どうでもいいよ、というのが本音です。
このような観点でみれば、アメリカのGDPのうち7割を占める個人消費の源泉である雇用がこんなような状態であれば、目先、ドル売りになっても仕方ないか、とは思います。
カテゴリー別の仕分け
私も上手に説明できていないので、またかんたんなグラフにしていきたいと思います。経済指標の先行、一致、遅行指数の意味は大丈夫だと思います。
「先行指標」→「一致指標」→「遅行指標」
主なもの
「政府」→「企業」→「家計」
このグラフの意味を解説させていただきますと、まず、景気が悪くなったら、政府が景気対策を打ちだします。つまり、政府が景気対策を打ちだしたら、それはPMIや各種の先行指標と同様に真っ先にマーケットに反応をします。
今の先進国の政府の場合、景気が悪化した場合に真っ先に手を付けるのは企業への支援になりますので、企業の業績が回復し、そして雇用が増大した結果、お給料が上昇するという循環になります。
今回の雇用統計ではっきりしたことは、今後、家計の悪化が予想されるということです。しかし消費者信頼感指数などの消費者の先行指数は良化をしていますので、果たして本当に悪くなるのかな、と思います。
ただ、今回の雇用統計でも、特段、お給料が下がったというわけでもなく、お給料の昇給の幅が少なくなっただけですので、消費者信頼感指数などは良化するといってもいいのでしょう。
つまり1-3月期は企業業績が悪化をしていたのですが、今回の場合、消費者があまりよくないという状態になっていると解釈すればいいと思います。ですから遅行指数が悪化した場合は、今度、また先行指標が改善をしてきてくればいいのです。
各種のPMIやISMなどは良いままですから、先行指標がよくなってくれば、また好景気循環になるのでしょう。しかし、上記の表で先行指標の下の政府の項目が今、何をやっているのか?を考えた場合、トランプさんは一生懸命、貿易戦争を仕掛けているのです。
こういうことは企業や消費者のマインドを冷やすことでしょう。しかし、報道というものも、反対者の声ばかり取り上げますが、こういう人たちは貿易戦争によって直接の利害が絡むから反対をしているだけであって、また盛大に騒ぐものです。
私でも、利害関係者であれば声を大にして叫ぶことでしょう。そういう声が大きくメディアは取り上げますが、トランプさんの支持率が改善していることからみるとアメリカ国内ではそれほど大きな問題になっていないのであろうな、と思います。
メディアは事実を報道していますが、結局、偏っているということで、その映像をみてひどい反対だ、と思わないことです。
たとえば、原発反対の日本のデモでも、盛り上がった人は盛り上がったでしょうけど、最大のデモ参加数などと言われましたが、盛り上がっているのは一部の人たちで過半の人は素知らぬフリをしていた事実を考えれば、反対者の声というのは単に盛り上がっているだけと判断できます。
しかし、これをメディアが映像付きで流していると大きなウェーブになっていると勘違いするのと一緒です。これでは納得できない人も多くいると思いますので、たとえば女子高生の流行トレンドで、大昔にヤマンバとかガングロなんて流行りました。
あれ女子高生の何パーセントがやったと思いますか?おそらく1パーセント以下ですよ。それが一大ムーブメントのように報道するのです。コンマ以下のことを大々的に報道するからみなさん勘違いするのです。
要するに報道は、公正な報道は心がけているとは思いますが、やはり購買や視聴率も欲しいから、ああやって盛大に騒ぐだけだと思います。では、根幹の問題を考えていきます。アメリカが貿易赤字に苦しむということはイコールの関係として経常収支赤字が問題なのです。
トランプさんがヨーロッパ、中国、日本に対して貿易戦争を仕掛けるのは
、経常赤字を解消したいからであって、その赤字を解消するのに貿易というアイテムを使ったのにすぎないのです。
、経常赤字を解消したいからであって、その赤字を解消するのに貿易というアイテムを使ったのにすぎないのです。
ヨーロッパ、中国、日本は貿易戦争によって打撃をこうむるでしょうが、アメリカ国内の人も打撃を被る人は多数でしょう。つまり攻撃を仕掛けたら、身内であるアメリカ人も打撃を被るのはトランプさんは100も承知の上、やっているのです。
この攻撃に勝利した果実は経常収支の赤字幅縮小になるのです。貿易で攻撃を加えることが目的ではなく、貿易戦争は手段にすぎず、本来の目的は経常収支の赤字縮小なだけです。貿易戦争を仕掛ければ、日中欧は打撃を被るでしょうが、アメリカも同様ということです。
つまり打撃を少なくするためには、関税分だけをドル高にすれば、ほかの国からも文句の言いようがなくなるだけの話です。ドル高にアメリカがなれば、景気の回復は遅れるし、輸出産業は高コストになるでしょう。
でも、この目的は、アメリカの巨額の赤字を解消することが目的なので細部には目をつぶることにしているだけです。だからドル高によって競争力低下になるから法人税減税を言い出しているのです。
なんだか、こんな方法で、巨額の赤字が解消するとは思いませんが、実際にやっているのだから仕方がありません。やっていることはレーガン政権と一緒のことです。
オバマのときは100パーセント関税をかけてドル安にしましたが、結果は上手くいかないので、ドル高にするだけの話でしょう。結局、この貿易戦争はアメリカのみならず、ほかの国に最終的には大幅な利益をもたらすと思います。
そして迷惑千万なのは新興国なのでしょうが、たぶん、安倍、習、トランプのトライアングルで新興国危機も回避しようとしているような気もします。そこに最近、北の将軍様も入って、彼は大喜びでしょう。この上記の3人でうまく為替をコントロールしようとしているのがはっきりとわかるような気がします。
(この記事を書いた人:角野 實)