おはようございます。きのうの「中国人民元の切り下げ」というのはある意味、想定済みといえば想定済みなのですが、中国人民元安からの資金流出からの株安というのは想定外でした。
2015年のチャイナショックは人民元流出が危機のきっかけだったのですから、流出の危機があれば人民元の切り下げなどやらない、というのが定石の考え方になると思います。
しかし、株安、人民元安から円高になるというのも想定外です。そしてアメリカ時間には再び、トランプさんが訳のわからないことを言いだし、さらに下落が加速するというような状態です。今回の件はまだ意味がわかりませんが、検証をしていこうと思います。
トランプさん発言の真意
トランプさんはFRBが金融引き締め、つまり利上げをやる意味がよくわからない、と吠えています。おそらくこの意味は5月の小売売上が大幅に上方修正されたことに起因すると思います。
つまり、この小売売上というのはアメリカGDPの7割を占める消費者部門になるので、この4-6月のGDPが前期比で5パーセントになるという驚異的な予想が出ていることが先ず、第一の誤算だと思います。
この結果を受けて、毎年、9月に行わなかった利上げをFRBが行うということに驚き、トランプさんがツイッターで文句を言い始めたと考えるのが妥当になると思います。
そのほかツイッターで言っていることは政府サイドの悩みと、消費者サイドの悩みがごちゃ混ぜになっていて何が言いたいのかさっぱりわからない状態です。
ただ、言えることはトランプさんが政府サイドの悩みをあまり漏らさないということです。つまり財政赤字の拡大によってその利払いが拡大し、それがさらなる財政赤字を引き起こすことに一番の懸念を示しているということは文意を吟味するとわかると思います。
結局、トランプさんのツイッターで何を表明したかったのかといえば、FRBが利上げすることによって、政府予算の計画が狂っていることに文句を言っているように見えます。つまり、中国への報復関税や人民元安などの貿易通貨問題は、この政府予算が達成できないことに対しての文句だと思うのです。
そもそもドル高を容認したのはトランプさん?
これは以前から言っていますが、トランプさんは世界の貿易相手国に対して関税をかけることによって貿易摩擦を引き起こしています。しかし、この裏では、ドル高にすることを容認することによってその関税を引き受けなさいということだと考えています。
この関税収入によって政府予算の拡大が見込まれ、ドル高によってアメリカ債券の売れ行きがよくなる、と計算していると思います。しかし一方で巨額の財政赤字の利払いは9月にFRBが利上げすることによって、計画が大幅に狂うことになります。
下手すれば9月よりも前倒しにして利上げを行う可能性もあることを念頭に置かなければいけません。なぜなら、FRBは前回のFOMCでフォワードガイダンスを撤廃する意向を示しており、マスコミが大好きなサプライズ利上げもやる可能性もあるということです。
サプライズがないときに大騒ぎし、サプライズの可能性があるときには、黙っているというなんともまぁ、チグハグなことをやっていると思います。おそらく、このようなFRBの利上げ観測から、トランプさんは、ドル高のペースを落としたいというのが本音だと思います。
しかし、中国はその合意通りに行程を進めているだけの話で、その合意をチャラにしたい、と自分の都合で言い出しても中国には迷惑千万な話です。
どちらにしてもアメリカの財政赤字は、巨額であり、その生命線はドル高になるのですから、ドル高方針を撤廃するということは、ファイナンスの危機になりますので、ドル高政策の撤廃はできないと思います。個人的には、それだけの話であって、それ以上もそれ以下もないと思います。
日本にとって円安が進行しなければ、自動車関税に大きく反対ができますので大きな問題ではないと思います。この関税の設定条件というのは円安になるのですから、円安でなければアメリカは課税できないと思います。
中国にしても資金流出を懸念するのが一番の問題なのに切り下げていることは、報道や専門家の資金流出懸念というピントがずれているとしか思いようがありません。
週末はアルゼンチンでG20会合がありますので、ここで善後策が話し合われるのでしょう。今のマーケットの見方が間違っているとは思います。
(この記事を書いた人:角野 實)