おはようございます。ISM製造業は予想通り、コンセンサスよりも低い数字で株価は売られ、ドル円は売られても戻るというような動きでした。今回はその解説と雇用統計について考えていきたいと思います。
ISM製造業指数
Econodayより
コンセンサスが54.5-55.5で、結果は、52.8です。先月は、55.3と考えると予想以上に低いということになります。結果としてドルの絶対値は下がり、ISM製造業というくらいですからNYダウ 工業株30種なのですからNYダウが大きく下げるのは必然となります。
上記のグラフをみると、12月、2月の安値よりも安値を探っており、いわゆるチャートでいえば底値割れと言ってもよいような状況です。少なくてもアメリカ経済の堅調さを強調するためには、12.2月の安値近辺で止まってほしかったと思います。
ただし、この検証は現時点では何とも言えなく、今後の経済指標の数字をみて、アメリカ経済のアウトラインを考えていきたいと思います。では、この結果から相場の見通しといえば、現時点では何も言えないということになります。
ADP雇用統計
労働省の発表する雇用統計の先行指標としてADPの雇用統計があります。しかし、最近、みているとこのADPの雇用統計は先行性を果たしていないな、と感じます。
Econodayより
上記は、ADPがピンク、本番の雇用統計の数字は水色になります。本来は、ADPと労働省の数字が近似しなければいけないのですが、ここ最近は大きく乖離をしています。
ADPの雇用統計は、アメリカ全土の給料計算を行うのがADPですので、月末締めの給料計算が契約各社から依頼がくるので新規の雇用がわかりやすい側面があります。
一方で本番の労働省調査は、サンプリングの数が絶対的に少なすぎるという欠点があります。さらに、月に1回だけ臨時雇用として働いたとしてもカウント1とされますので統計の性格さとしてはどうなのか、とは思います。
ともかく、ここ最近は、ADPと労働省の雇用統計に相関性があまりないということはきちんと押さえておきたいことです。では、何で判断をしていくのか、ということになります。
上記は失業保険申請者数になります。
4/20の週に大きく、失業保険の申請者数が大きく上振れをしています。これは失業者が増えたということを意味しています。
ただ、失業が増えた分、雇用も増えるだろうという推測がADPの結果とも言えます。ただ、失業者は失業者のまんま、という可能性が労働省の発表ではありますので、推測にもなっていません。
本来なら、この本番の雇用統計の数字は、ISMのサービス業をみればだいたい予測はできるのです。こんなことを言っているのはアメリカにもほとんどいませんし、日本には皆無でしょう。
なぜ、ISMの非製造業をみれば本番の雇用統計がわかるかといえば、企業も消費者もそのカテゴリーは非製造業、つまりサービス業に属しているからです。GDPの数字の9割はサービス業が貢献をしているのですから当然の帰結なのです。
今回のISM製造業にも、新規受注や、雇用、在庫などさまざまな指数があり、それらの数字をみても、雇用統計の結末はわかりません。しかし、ISM非製造業をみればだいたい、それらと近似する数字が雇用統計は出るのです。
ただし、ISMは製造業が月の第一営業日、ISM非製造業は月の第三営業日の発表になります。今回の第三営業日が月の第一金曜日になりますので、雇用統計と一緒の発表日になります。
雇用統計が日本時間21:30なのに対して、ISN非製造業が22:45ですから今月はこの手法は使えません。ただし、月によってはISM非製造業が先に発表されることがあり、その場合は、私は雇用統計の数字をほぼ当てているはずです(笑)。
今回の雇用統計の懸念
まず、今回の新規雇用人数に関して、私は楽観をしています。ADPもそのバックグラウンドにありますが、いま、春ですよ、ということです。春になればアメリカ経済は好調になり、企業も設備投資を増やし、結果として雇用人数も増えるのが例年のパターンです。
ですからADPも予想以上に好調ですから、ま、大丈夫でしょ、と思っているのです。ただし、最近の傾向としては、ADPの数字がよすぎると本番のほうはさえない数字になっているのが懸念材料です。
私が一番心配しているのは労働コストの減少です。つまり、雇う側の労働コストが下がるということはたいていの場合、お給料が下がるということと直結します。
ニュージーランドでテロが起こったのも、雇用が悪いということ、そして安い労働者が流入したということがあると思います。失業者保険の申請者数にしても4/20の週からなぜ、いきなり上昇をしたのか? という疑問もあります。
もちろん、どこかの大手会社がリストラを実施すればあのような数字にはなりますが、その辺のことは聞いていません。ただし、3月から労働コストが劇的に下がってきており、結果として、お給料が高い人をクビにして、安い人間を雇用しているとなると、いままで出ている経済指標はすべて説明できるのです。
そもそも物価上昇が1.7程度でお給料は3.2パーセント上昇をしているのですから庶民は生活が楽です。しかし企業は、売り上げが落ちて、業績不振なのですから人件費は下げたいはずです。
要するに安い労働者を集めている可能性があるということです。ですから雇用統計はそれほど大きな期待をしてはいけない、ということです。それと、もう一点いうなれば、今回のGDPやISM製造業のコンセンサス、すべて逆方向へ行っています。
私が適当な電卓で計算できる数字で予測したほうがより正確だったというのが事実です。こうやってコンセンサスと逆に行く相場は荒れます。これは注意をしてください。7月までコンセンサスと逆に行く相場になると思います。
(この記事を書いた人:角野 實)